消費者のモバイルの利用時間が、過去3年間で63%も増加した米国では、消費者の利便性向上を目的とした「モバイルへの対応」が非常に重要なポイントになっている。そして特に、モバイルへの対応が最も強く求められているのが金融機関だといえる。
これまで米国の金融機関がモバイルに対して何もしていなかったわけではない。米国では、2015年から2016年にかけて、約200億ドル(約2兆2400億円)がFinTech(金融[=Finance]と、技術[=Technology]を合わせた造語。金融分野で情報技術を駆使し、既存サービスの改善や新しいサービスを生み出す動きのこと)分野に投資してきた。これに伴い、金融サービスを取り巻く環境はデジタル化が進行している。
だがそれは、一部のFinTechベンチャー企業、そして積極的かつ先進的な取り組みを進めている金融機関が推進しているに過ぎない。2016年11月に発表された、米L2社による米国の金融機関70社を対象に実施した調査をまとめたリポート(編集部注:資料ダウンロードにはサイトへの登録が必要)によると、従来の金融機関の大半は「遅れている」という評価となっていた。
そして「ミレニアル世代(1980年代から2000年代初頭にかけて生まれた層)の約半数が、従来の金融機関ではなく、新興の金融機関を選んでいる中、モバイル対応は急務となるアクションの一つ」と提言している。
実際、調査対象となった金融機関の多くが進めている「モバイルへの対応」は、単に自社のウェブサイトをレスポンシブデザイン(ユーザーが使う端末に合わせて表示方法を変えられるデザイン)にしている場合が多い。しかも全てがレスポンシブデザインになっているわけではなく、旧来のPCでの表示に特化されたものが混在しているケースも少なくない。
つまりモバイルの特性や、モバイルをメーンに用いる消費者のニーズや顧客行動について、きちんと考えられていないと評価されているのだ。せっかくモバイル用アプリを提供しているのに、それをモバイルサイト上で紹介していないのはその最たる例だ。
ほかにも基本的かつ“モバイルならでは”の機能やメニューがきちんと実装されていないといった点が問題として指摘されている。具体的にいえば、モバイルサイト上からすぐに電話がかけられるような仕組みになっていなかったり、位置情報と連動して支店の場所を案内できるようになっていなかったりという状況だ。