2016年1月末、全米広告代理店協会(American Association of Advertising Agencies = 4A’s)が、「透明性の基本理念(Transparency Guiding Principles of Conduct)」と題した文書を発表した。これは「広告代理店が行うメディア・プランニング、およびメディア・バイイング」、「広告代理店と媒体社間におけるビジネス関係」、そして「広告主企業と広告代理店間におけるコンプライアンス」という3領域で、「透明性」を維持したビジネスを展開するよう策定されたものである。
この「基本理念」は、全部で9項目から成り立っている。例えば広告代理店が実行するメディア・プランニングやメディア・バイイングに関しては、全て透明性が伴っていなければならない。こうした約束事はもちろん、価格の合意に関する事項を含めて全てが開示できなければならない、といったことまで及んでいる。
広告代理店と媒体社間のビジネス関係に関しても、明確な線引きがなされるようになった。仮に広告代理店と媒体社の間に、何らかの形で商業的な関係性が発生する場合、それは広告主企業との関係や、広告主企業からの依頼を受けて進められるメディア・バイイングなどの活動とは切り離された形で行われなければならない。
しかも広告主企業と広告代理店間のコンプライアンスについては「いかなる場合においても、リベートなど不透明な形での金銭的なやり取りがあってはならない」という。ある意味当然ではあるものの、厳しめのトーンでまとめられている。
ただしこの文書が発表された直後に、全米広告主協会は「一方的、かつ早まったものである」と非常に厳しいコメントを発表した。その理由は「(広告主企業の)マーケターのことが十分に考えられていない」といったもの。例えば「メディア・バイイングの透明性」という部分一つをとっても、広告主企業と広告代理店の懸念事項は決してそろっているとはいえないというのだ。