消費者の生活の中にデジタルが深く入り込むようになり、購買行動や情報消費行動の中に、パソコンやスマートフォンといった複数の端末が関与することが、もはや当たり前となってきた。そのため企業はマーケティング活動の中で消費者の行動や考え方を理解する際に、これら複数の端末が時と場合に応じて切り替わることを前提にした形で、行動履歴を分析する必要が出てくる。こうした分析のことを「クロスデバイストラッキング」と呼んでいる。

 顧客行動をクロスデバイストラッキングした結果は、高度にパーソナライズされた広告やその他のコミュニケーションとして、消費者個人の目に触れることになる。例えばスマートフォンで特定のWebページを閲覧した後、パソコンを使用している時にもその広告が表示されたり、SNS上でも同様の広告を目にしたりする、といった経験があるだろう。

 こうした情報発信は時として、消費者を過度に追いかけ回すことにもなりかねない。「いつもどこかで見られている」という不安を消費者に与えてしまう場合もある。

 実際のところクロスデバイストラッキングによって、消費者の行動履歴を密に分析して、広告主や媒体が特定の個人を識別することも不可能ではなくなっている。2017年1月23日に、米プリンストン大学と米スタンフォード大学の研究者が発表した論文にもその一端が見える。Webサイトの閲覧履歴とTwitterやFacebookなどのSNSで公開されているプロフィールを結び付けることによって、個人の特定は十分可能だというのだ。

 こういった現状に対し、2017年1月下旬に米連邦取引委員会(FTC)が、クロスデバイストラッキングに関して23ページにわたるリポートを公開した。クロスデバイストラッキングを実践する企業に、消費者のプライバシーの観点から守るべき指針を発表している(筆者注:公開日は偶然にも、前述の論文と同日の1月23日だった)。

 その指針は、「透明性の担保」「選択肢の提供」「機微な情報への対応」「セキュリティ」の4項目で構成されている。

 「透明性の担保」とは、自分たちがクロスデバイストラッキングをしている旨を、その正当な理由および消費者へのメリットと共に開示する行動が必須となるということだ。そして、クロスデバイストラッキングをオプトアウトできる「選択肢の提供」も、合わせて実施すべきとしている。

 続いて消費者の健康状態や財務状況といった「機微な情報への対応」について。これらにひも付いた情報は基本的には収集しないことを徹底し、どうしても必要な場合は、消費者個人の同意を得る必要があるとしている。

この先は日経クロステック Active会員の登録が必要です

日経クロステック Activeは、IT/製造/建設各分野にかかわる企業向け製品・サービスについて、選択や導入を支援する情報サイトです。製品・サービス情報、導入事例などのコンテンツを多数掲載しています。初めてご覧になる際には、会員登録(無料)をお願いいたします。