国民1人ひとりに12桁の番号「マイナンバー」を割り当て、社会保障や税金に関する書類に記入するマイナンバー制度。社会保障・税番号制度とも呼ばれ、政府が2016年1月から本格的にスタートさせる。

 この新制度で、企業は社員などからマイナンバーを集め、決められた書類に記入する事務手続きを行うことが求められる。もし集めたマイナンバーを正当な理由なく漏洩させると、漏洩させた担当者だけでなく、企業にも刑事罰が科せられる。信用失墜の事態を招かないようにするためにも、マイナンバー対応は企業にとって喫緊の課題といえる。

 果たして2015年3月時点、企業はこれにどう向き合っているのか。

 日経情報ストラテジーが2015年3月に実施した「CIO調査(本文末の別掲記事に記載)」では、関心の高まるこの制度の対応状況について、企業のCIOに質問をぶつけてみた。

金融で取り組みが先行

 239社から得たこの質問の回答を集計した結果、「すでに対策を始めている」「対策を立案・計画中」の企業は合わせて21.4%にとどまった(図1)。「業務・システムへの影響を評価中」「制度内容を調査・吟味中」と答えた企業の合計は44.8%で半数近くを占めた。

図1●現時点で御社の「マイナンバー制度」への対応はどの段階にありますか?(N=239)
図1●現時点で御社の「マイナンバー制度」への対応はどの段階にありますか?(N=239)
5社に1社が対策に動く
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 そんな状況でも、対応が進んでいるのはどんな企業なのか。対応状況を業種別でみると、トップは金融。「すでに対策を始めている」「対策を立案・計画中」と答えた企業は合わせて50%だった。

 金融業界が先行するのは、マイナンバーを集める対象社員が多いことに加え、顧客からも集める必要に迫られているからだ。「早いところでは、2014年春から専門のプロジェクトチームを立ち上げて対策を進めている」と、企業の動向に詳しい野村総合研究所(NRI)の渋谷直人新事業企画室長は明かす。

 金融機関のうち銀行は、預金者の口座とマイナンバーを任意で関連づける取り組みが2018年からスタートするため、比較的余裕がある。対応を急ぐのが生損保業界。2016年1月から保険金の支払調書などに、顧客などのマイナンバーを加える必要があるからだ。

 では、マイナンバー対応で先行する企業は、どんなテーマに取り組んでいるのだろうか。

 「すでに対策を始めている」「対策を立案・計画中」と答えた50社のうち、最も多かったのは「マイナンバーを集めるプロセスの構築」で、64.0%(図2)。続いて「法定調書などの帳票フォーマットの修正」(58.0%)、「本人確認のやり方の確立」(46.0%)、「マイナンバーの保管方法」(42.0%)という結果になった。

図2●対策を始めた、もしくは立案・計画している内容は?(N=50、複数回答)
図2●対策を始めた、もしくは立案・計画している内容は?(N=50、複数回答)
プロセスを包括した対応が進む
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 制度では2015年10月、国民1人ひとりに、自治体からマイナンバーが通知される。企業が法定調書などにマイナンバーを記入して提出するには、個々に集めていく必要がある。マイナンバーは社員だけなく家族の分も必要だ。年末調整の扶養控除等申告書に、社員と家族のマイナンバーも記載するからだ。

 社員とその家族からは「年末調整の書類を提出してもらうタイミングで、本人を確認する書類と合わせて集めるのがよいだろう」と制度に詳しい、牛島総合法律事務所の影島広泰弁護士は指摘する。

 マイナンバーの記入必須の支払調書は、短期アルバイトや、駐車場の使用料を支払う個人の取引先へも送る必要がある。多岐にわたる収集対象の整理には早期に着手したい。

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