従業員がSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)に、不適切な投稿をした結果、ネット上で炎上。企業が謝罪などに追い込まれるということが2~3年前に相次いだ。最近は落ち着いたかに見えるが、同様の問題は今も発生している。場合によっては、企業や役員個人が損害賠償請求を受ける可能性もある。重大な事態を防止するには、従業員教育が欠かせない。


 企業が法務面で留意すべき事項を指摘する本連載。今回は、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)に関して、企業が直面している法律問題を取り上げる。

 スマートフォンやタブレットの普及で、TwitterやFacebookをはじめとするSNSが広く普及した。企業にとってSNSは、効果的な広告ツールとなり得るが、深刻なダメージを被るリスクもはらむ。代表例が、従業員による不適切な投稿だ。社会問題化したため、記憶に新しい読者も多いだろう。

 不適切な投稿は、従業員個人の問題では済まない。企業として対策に取り組む必要がある。

 従業員による不適切な投稿は、大きく二つに分けられる。一つは、人種差別的な内容など、業務に直接関係のないもの。もう一つは、顧客や企業に対する誹謗中傷を含むなど、業務との関係を有するものである。

 一般に、企業に与えるダメージがより大きいのは後者。その実例を三つ示した上で、こうした事態を発生させないための取り組みについて述べる。

(1)顧客を誹謗中傷する投稿

 2011年5月、アディダスパフォーマンスセンター銀座店に勤務するアディダスジャパンの従業員が、来店したサッカー選手とその家族を誹謗中傷する発言をTwitterに投稿した。同社は、当該選手とその所属チームに謝罪し、自社のWebサイト上に経緯の報告とお詫びのコメントを掲載した。

(2)顧客のプライバシーに関する投稿

 2012年4月、東京メトロの男性駅員がシステムを悪用し、ある女性のPASMOの乗車履歴を検索。利用した駅名や利用日を匿名掲示板「2ちゃんねる」に投稿した。同社は当該駅員を懲戒解雇した上で、謝罪のための記者会見を開いた。さらに、システムを改修し、PASMOカードがなければ乗車履歴を検索できないようにした。

(3)悪ふざけの投稿

 2013年7月、ローソンのアルバイトが、アイスクリーム用の冷蔵庫に自らが入った写真をFacebookに投稿した。同社は、自社のWebサイト上に経緯の報告とお詫びのコメントを掲載し、問題となった店舗とのフランチャイズ契約を解除した。同月以降、バーガーキング、ほっともっと、丸源ラーメン、ブロンコビリー、ピザハット、ピザーラや餃子の王将などで、同様の悪ふざけの投稿が相次いだ。

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