前回は、IT製品の選定における戦略とは「未来予測」のことではなく、「未来に至るまでの様々な変化に対応可能と考えられる製品を現時点で見極める努力を行うこと」である、と述べた。今回は、製品選定とパートナー選定のどちらが重要なのか、について解説する。なお、本連載における「製品」とは、IT製品のことであり、ハードウエア、パッケージソフトウエア、サービスなど、ベンダーから販売されているIT製品やサービス全般のことを指している。

 以前の連載で筆者は、ユーザー企業にとってSI(System Integration)ベンダーは重要な存在であり、双方が「ITシステムのビジネス貢献度向上」を共通のゴールとして進むことが重要である、と述べた。この点に関しては、3年半が経過した現在も変わっていないし、ほかにもNI(Network Integration)ベンダーや販売代理店など、ITの提供に携わる様々な業態の企業についても、同じことが言える。本稿では、これらの企業をまとめて「パートナー企業」と呼ぶこととしたい。

 IT部門がどれだけ先進的でシステムの内製率が高くても、パートナー企業を必要としないユーザー企業はまずないだろう。OSS(オープンソースソフトウエア)をフルに活用している企業であっても、サーバー機器やネットワーク機器、クラウドサービスを利用するはずである。すべての企業にとって、パートナー企業の選定は非常に重要なポイントなのである。

ユーザーはテクノロジー、アーキテクチャーで選定しているか

 これまで、IT部門の多くは、自社の要求をまとめたRFP(Request For Proposal=提案依頼書)に基づいてパートナーから提案を募り、それを評価し選定してきた。筆者は、数多くの国内ユーザー企業のITプロジェクトを支援してきたが、IT部門がRFPに、その案件に応じた製品やテクノロジー、アーキテクチャーを明記したうえで、パートナー企業を選定する、というパターンは非常に稀である。

 非常に多いのは、ITベンダー各社の提案内容を検討、評価して一つを選んだうえで、その提案に含まれていた製品、テクノロジー、アーキテクチャーを採用する、というパターンである。つまり、本連載で前回解説した「戦略的IT製品選定」よりも、「パートナー提案選定」を優先する企業が圧倒的に多いということである。

 このような「パートナー提案選定」をシステムごとに実施した結果、それぞれのシステムにおける「IT製品選定」がバラバラなものになり、システムの「アーキテクチャー」「テクノロジー」「開発言語、フレームワーク、開発ツール」も当然バラバラになる。つまり、「パートナー提案評価による選定」は、システムサイロ化の根本原因のひとつなのである。

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