前回、クラウドにおける製品選定の考え方は、従来のIT製品とは異なることを認識すべきであると述べた。今回は、クラウド採用時にありがちな「スモールスタート」の是非について解説する。本連載における「製品」とは、IT製品のことであり、ハードウエア、パッケージソフトウエア、サービスなど、ベンダーから販売されているIT製品やサービス全般のことを指している。
クラウドにはいろいろな長所があるが、なかでも初期費用が不要で迅速に利用開始できることに魅力を感じる企業は多い。革新的なビジネスにはリスクがつきものであるが、クラウドではシステム保有リスクを最小化できる。また、競合他社より早くビジネスを開始するためには、ハードウエアやネットワークを新規に準備する必要がないクラウドが強い味方になるだろう。
クラウドを検討している際に、ベンダーから「スモールスタートでいきましょう!」という提案を受けたユーザー企業は多いはずだ。「スモールスタート」とは言うまでもなく、まずは小さくはじめて、その後機能を拡大したり、規模を拡大するという進め方のことである。
また、経営者や事業部門から「このクラウドを使ってみたい」と言って、試しに使い始めたケースも多い。筆者がコンサルティングを行った企業のほとんどは、このような経緯でクラウドを利用開始した経験を持っていた。
図1にベンダーの営業担当者などが良く用いる「スモールスタート」の推奨理由を挙げた。どれも一見もっともらしく見える。しかし、果たして本当にそうなのだろうか?