本連載の第1回テーマは、自らの意思で製品選定を行うことの重要性について述べた。今回は、クラウドにおける製品選定の考え方が、従来のIT製品とは異なることを解説する(本連載における「製品」とは、IT製品のことであり、ハードウエア、パッケージソフトウエア、サービスなど、ベンダーから販売されているIT製品やサービス全般のことを指している)。
日本では大企業のクラウド活用が進んでいる。図1に、国内ユーザー企業におけるIaaS(Infrastructure as a Service)の活用動向を企業規模別に示した。ここでの「クラウド」とは事業者がサービスとして提供しているクラウドのこと(いわゆるパブリッククラウド)を指しており、ユーザー企業が自社所有資産でクラウド的なIT基盤を構築運用する「プライベートクラウド」は対象外である。
中小企業ではIaaSの活用は進んでいないが、5000人以上の大企業においては、すでにIaaSを活用している企業と1年以内の導入を計画している企業の割合が約半数を占めていることが分かる。この傾向は、PaaS(Platform as a Service)およびSaaS(Software as a Service)でも同様であった。国内大企業の多くがクラウドに前向きだということが分かる。
IT業界の「クラウド」は利用モデルの先駆け
クラウドの特徴にはいろいろあるが、「IT選択」という視点では「いつでも使いたいときに使いたいものだけ利用できる」ことが重要である。クラウドでは、ソフトウエアはもちろんのことハードウエアすらも、使いたいときだけ「利用」することが可能だ。クラウドサービスにもよるが、例えば1時間だけの利用も可能である。
世間では、カーシェアリングやウエアシェアリング(服飾のレンタルサービス)など購入せずに利用するビジネスが最近台頭しているが、ITの領域ではそれらに先駆けてクラウドが登場したといえる。
以前よりリースを利用したIT導入はあるが、このようなシステムは基本的にユーザー企業側にリスクがあり、いつでも制約なく利用停止することはできないし、ソフトウエア、ハードウエアや機能の追加/変更も容易ではない。また、製品のレンタルも昔から存在しているが、選択肢が限られており、最低契約期間もクラウドに比べて長い。