今回から、全8回の予定で、企業のIT部門に属する読者に、クラウド時代におけるIT製品およびベンダーの正しい選び方について解説する。

 筆者は以前も、ITpro ActiveでIT製品の正しい調達法を解説する連載「IT部門必読!製品/ベンダーの正しい選び方」を書いた。製品選択において、思想、方針、ルール、プロセスを持たないユーザー企業は、ビジネスにおいて勝ち残っていくことが困難になると考えたからだ。

 それから3年半余り経った今も、思想、方針、ルール、プロセスが重要であることに変わりはない。だがその一方で、企業IT向け製品の選択肢は大きく様変わりした。特にクラウドの普及と成熟は、IT製品の調達プロセスに大きな影響を与えている。そこで再び、クラウド時代の製品/ベンダー選びについて整理することにした。

 本連載の最初のテーマは、製品選定を自らの意思で進めることの重要性である。ここで、本連載における「製品」とは、IT製品のことであり、ハードウエア、パッケージソフトウエア、サービスなど、ベンダーから販売されているIT製品やサービス全般のことを指している。

その場しのぎの製品選定がシステムのサイロ化を引き起こす

 かつての企業ITは、堅牢性を最重視していた。その後、システムによる従業員の生産性向上が企業ITの主眼となり、手作業がシステムにどんどん置き換えられていった。現在、企業ITが最も強く求められていることは「ビジネスへの直接的な貢献」である。売上増大、利益率向上、顧客満足度向上への具体的な寄与が求められている。

 いつの時代も、IT部門に対する期待には大きいものがあるが、IT部門に対する評価は決して高いとは言えない。筆者は日ごろから多くの企業のIT部門の方々とディスカッションしているが、IT部員の多くは日々大変な努力をしているし、総じて多忙である。しかし、IT部門がシステム構築の主体となっているかと言えば、そのような企業は非常に少ない。

 具体的には、システムに対する要求はユーザー部門が提示することが多く、構築の主体はインテグレータであることが多いのである。IT部門は「システムに特化した調達部門」と化している企業が多いのが実情である。そうしたIT部門が、システム構築のための設計思想やテクノロジー標準を持たない状態で、システム案件ごとにその場しのぎの選定作業を行うことで、システムのサイロ化を引き起こしてきたのである。

 個々のシステムがまったく異なる設計思想で構築され、同等の機能を有する製品が複数乱立し、秩序に欠けた分散化が進行するという、この「システムのサイロ化」現象は、メインフレームからのダウンサイジングが進んだ時期以降、顕著になってきたものだが、良い点はなにもない。

 サイロ化したシステムを運用するには数多くの要員が必要で、システム間連携がスパゲティのようになっているため、システム改修時の影響度を判定できず、システムの修正や追加が困難になる。スマートデバイス(スマートフォンおよびタブレット)やクラウドといった先進的なテクノロジーを採用しようとしても、既存システムとの接続に時間がかかる。

 企業ITのビジネス貢献度を高めるには、「システムのサイロ化」を解消する必要がある。そのためには、システム構築における製品選定やベンダー選定にあたって、設計思想、方針、ルール、意思決定プロセスを持つ必要がある。

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