デジタルマーケティングを展開する上で非常に重要になるのは、的確なターゲットを明確にすること、そしてターゲットに情報を届けるうえで最適な接点を選ぶことです。
デジタルマーケティングそのものは、読んで字のごとく「デジタル」で展開するものですが、デジタルは手法にすぎません。一つの手法だけで完結すると考えないほうが無難です。
1990年代初頭まで、マーケティングに活用できる顧客との接点は、オールドメディア、すなわち4大メディアと称される新聞、雑誌、テレビ、ラジオの純粋な広告に、ダイレクトメール、Webサイト、eメール、セールススタッフやイベント・キャンペーンを加えても九つにすぎなかったと思います。しかし今では、さまざまなメディアごとに多くの手法があり、Webサイト一つ取っても、バナー広告やリスティング広告、ネイティブ広告など多彩な手法があります。メディアそのものも、SNSやスマートフォンサイト、デジタルサイネージはじめ、両手にあまる場を活用できます。
これらの接点をどんなターゲットに向けて、どう活用するか。接点となるメディアの特性に合わせて、またターゲットの購買マインドやネット上の行動に合わせて、最適なコンテンツを提示し、最適な接点を考えることが大切です。
管理者レベルに届けるには紙が有効
多くの製造業やサービス業では、自社サイトや自社メディアが、BtoBビジネスとの大きな接点となっています。米Content Marketing Institute(=CMI、オハイオ州)創始者のジョー・ピューリッジ氏は、「この流れを受けて企業サイトは、出版社やメディア社のサイトに近くなってきています」と話します。すなわちオウンドメディア化しているということです。「企業と出版社などで違うのは収入源だけ」とピューリッジ氏は笑います。
接点となるメディアは増え、手法も多彩になってきましたが、どんなレベルの相手とも容易にコンタクトを取れるとは限りません。管理者レベルのビジネスパーソンはとても多忙です。Webサイトを自分で検索し、情報を探すヒマがないのは、日本だけでなく米国でも同じです。
このためBtoB案件で管理者レベルのビジネスパーソンとの接点を持つために、ピューリッジ氏はわざわざ紙の冊子を用意しています。
「CMIでは、Webサイトなどを通じてデジタルな情報をメーンに提供していますが、実はプリントメディアも1万2000部以上を発行し、郵送しています。紙媒体は、絞り込んだ情報をいつでも手に取れることもあって、管理者レベルのビジネスパーソンに情報を届けるうえで効果的です」(ピューリッジ氏)。
米国でも印刷物は減っているので、紙の冊子を用意することが競合社との差異化につながります。紙媒体が届くことはステータスシンボルの一つとなる、という側面もあるようです。
また、紙媒体の効果について、ピューリッジ氏は以下のような実体験を話してくれました。