アドビシステムズはIllustratorなどクリエイティブ系のソリューションで培ってきた企業に、デジタルマーケティングソリューション「Adobe Marketing Cloud」を提案して、マーケティング系ビジネスの拡大を図っている。同社の具体的な取り組みについて同社デジタルマーケティング プロダクトマネジメント部門の製品統括責任者の上原正太郎氏に、2BCの尾花淳代表取締役が迫った。

(記事構成は松本 敏明=ITpro Active)


(前編から続く)

尾花:2016年以降にアドビのサービスを導入するお客様の増え方をどうとらえていますか。

アドビシステムズ デジタルマーケティング プロダクトマネジメント部門製品統括責任者 - JAPAC市場の上原正太郎氏
アドビシステムズ デジタルマーケティング プロダクトマネジメント部門製品統括責任者 - JAPAC市場の上原正太郎氏
(撮影:都築 雅人)
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上原:このあたりを数字でいうのは難しいですね。2015年は前年に比べてイベントの参加者が増えており、関心が高まっているとは思います。

 お客さまの中には「勉強モード」のところもあります。「(マーケティング施策を)ここまでやったけど、この先に行けないので相談に来ました」という話が増えているようです。こうした、これから啓蒙が必要なお客様については、導入例をこの1~2年で2倍から3倍に伸ばしていきたいです。それに向け優秀な人材を増やすよう、積極的に投資をしているところです。

尾花:デジタルの成熟度が高いお客様がアドビのサービスを使っているのと、アドビのサービスを使うことでお客様の成熟度が高まっているという二つの面があるのではないかと推測しています。先進的なお客様が市場を伸ばし、新しく導入する企業も増やしていきたいということですね。

上原: そうですね。お客様を見ていて、デジタルマーケティングをIT部門主導で実践していたり、マーケターがその領域を十分キャッチアップできていなかったりというように、デジタルマーケティングを推進できる人材がいないと感じることがあります。デジタルマーケティングを成功させるには、社内で啓蒙をして実践する役割を担う人材が不可欠です。事実そういう人がいる企業には、デジタルマーケティングが浸透しているように思います。

尾花:マーケターのセンスを持つIT部門の担当者と、ITがしっかり分かるマーケターの両者が求められていると感じますね。ところが旧態依然とした会社では、この両者の間が全然かみ合いません。

上原:アドビとしては、セキュリティやガバナンス、ワークフローといった、IT部門の方に刺さるメッセージを使うなど、少し味付けを変えながら提案する場合もあります。

尾花:ではAdobe Analyticsを使っているという接点が既にあるお客様に、フルラインアップのサービスを導入してもらうようにするにはどのようなステップを踏んでいるのでしょう。

上原:社内にアドビ・グローバル・サービス(AGS)という部門のコンサルタントがあって、お客様に実際のツール提案から実装、運用そしてその実践のための組織の在り方を支援するという体制を作っています。日本では通常、パートナー企業にサービスの販売を全て任せるモデルですが、アドビは直接サポートするパターンと、パートナーを支援するパターンの両輪でやっています。

 直接サポートする場合は、そのツールを知り尽くしたスペシャリストがお客様と一緒にビジネス課題を洗い出します。そうなると1年では解決しないので、ロードマップを作り中長期的にお客様とやり取りし、お客様のニーズやプライオリティに応じて製品を提案していきます。各種製品を一気に採用する企業はまずありませんが、既存のお客様にはネクストステップを示しています。

尾花:これが進んでいくと、マーケターとして使いこなせる機能をどう考えるかも重要になるように思います。例えばAI(人工知能)のような機能を使って大半の業務を自動化するといったニーズはお客様にあるのではないでしょうか。

上原:運用ノウハウやツールに対する細かい知識はお客様に必要ないかもしれませんが、デジタルでできることを理解して企業として何をすべきか考える方とか、ビジネス部門と技術部門の間に立って旗振りをするとかいった方とは、お客様側にいてほしいと考えます。アドビがサポートする部分もありますし、運用を担うパートナーに任せる場合もあるでしょう。

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