日本IBMは2015年2月に独立採算制のコマース事業部を組織。買収したユニカ社やシルバーポップ社の製品を取り入れ、BtoBおよびBtoCの両面で企業のマーケティングオートメーション(MA)の導入を提案している。日本IBMのIBMコマース事業部 岩佐朱美事業部長に2BCの尾花淳代表取締役が、IBMが実践するデジタルセールスの具体像を聞いた。
尾花:BtoBを中心に、IBMのマーケティング事業の全体像を教えてください。
岩佐:IBMグループのコマース事業はそもそも、BtoB企業であるIBM自身が、マーケティングから営業、売り上げ計画までの流れを作っていく取り組みの一環でした。5年以上も前から(米ユニカ社のマーケティングキャンペーン管理ソフトである)「IBM Campaign(旧Unica)」や(米シルバーポップ社のエンタープライズマーケティングオートメーションソフトである)「Silverpop」などを社内で使っていて、BtoBの機能を加えるなどを要望してきました。そして製品を扱うベンダーを買収(ユニカ社は2010年、シルバーポップ社は2014年)し、現在はこれらをBtoB企業のお客様に展開しようとしています。
IBMでは2015年2月頃から、従来の電話中心だったインサイドセールスを、Webやソーシャルを駆使した「デジタルセールス」に変えています。バックグラウンドでマーケティングオートメーション(MA)ツールやナーチャリング技術を使い、CRMも勉強しながら営業を変えています。
IBMは「CtoB(Client to Business)」という言い方をしています。これは最初の案件の発掘から、ナーチャリングを経て、売り上げの達成までのサイクルをしっかり回そうというものです。サイクルの回し方には、全世界規模で回すものもあれば、日本の支社だけ、あるいはブランドや事業部ごとでといった回し方があります。こうして自分たちも実践しながらお客様にノウハウを提供する、いわゆる「伴走サービス」を提供しようとしています。
尾花:まずIBM自身がユーザーとなり、各領域のいろいろな企業との関係を生かして、そこから事業を創生していくということですね。日本のBtoB企業には具体的にどのようなところで導入実績がありますか。
岩佐:日本では製造業をはじめいろいろなお客様が使い始めていますが、ライバルに導入していることを知られたくないところばかりです。導入したお客様はBtoBとBtoCが半々くらいで、合わせて3桁に近い2桁の企業が国内で使っています。
尾花:実際にインサイドセールスやデジタルを駆使したマーケティングをモデルとして構築し実践している企業は、日本にはほんの一握りだという感覚があります。
岩佐:以前は、あるイベントでお客様情報を集め、そのデータを営業に渡すだけといった「フロー型」になっていました。それを「ストック型」に変えていくべきです。見込み客がイベントやダイレクトメールに反応した、実店舗を訪れた、コールセンターに接触した、さらにWebやモバイルなどデジタル上で行動したという履歴を合わせて、キャンペーンを実践する必要があります。
尾花:そういった考え方が始まったのが数年前として、ここ最近でお客様の中で意識や実践に向けた動きが変わってきたという実感はありますか。
岩佐:お客様としても、BtoBマーケティングのデジタル化を取り入れて、会社の仕組みを変えようと思っているはずです。しかし全部それらを自分で実行すると大変なことでした。企業の文化を変えなくてはならないですし、ITを使う仕組みやデータベースの整備なども必要です。ここに私たちが提供できるツールがそろってきたことで、お客様の実現可能性が高まったと言えます。
ただそれだけではなく、効果の測定手法も変えなくてはいけません。今までは、マーケティングが集客したものに何人来たとか、営業にリードを何件渡したかといったところまでしか測定できず、営業は受け取った後に何もしないということもありました。それらがツールが整ったことで、可視化できるようになります。