欧州SAPは2013年のHybris社買収を経て、デジタルマーケティング領域でも力を入れている。2016年6月には「SAP HYBRIS SUMMIT JAPAN 2016」を日本で開催。最新のマーケティング機能について解説している。イベントに合わせ来日したSAP HybrisのVP Solution Managementである、トーマス・ルール氏に話を聞いた。
まずSAP Hybrisのアーキテクチャーを理解したい。
Hybrisでは下にインフラレイヤーがあり、その上に5個のアプリケーションがある。具体的にはHybris Commerce、同Billing、同Marketing、同Service、同Salesで構成する。
このスタックは統合されており、同じデータを活用し、アプリケーションが異なっても一貫したプロセスを実行できる。データについては、新しいプロダクトである「Hybris Profile」がそのスタックに関わってくる。
その上にエクスペリエンスマネジメントの機能がある。製品名で言えば「Hybris CX(Customer experience)」で、ユーザーが全てのチャネルで一貫した体験ができるようにしている。
SAPは2013年にコマースソフトを提供していたHybrisを買収した。お客様の声から学ぶうちに、コマースの機能がマーケティングの機能から独立して動くのではなく、双方のアプリケーションが連携することを重視するようになった。
コマース+マーケティングのアプリが関係する例には、商品のレコメンデーション機能がある。マーケティング機能で集約したユーザーのプロファイルがコマース機能に送られて、コマースがWebサイトでそのユーザーにあった製品を推薦する格好だ。
マーケティング+サービスは、スポーツ用品メーカーが靴を発売した例で説明しよう。その靴を紹介するEメールが届くと、ユーザーはWebサイトにアクセスしてコールセンターで注文するだろう。ここでオペレーターはユーザーに案内が届いたことやWebサイトで何を見ていたかを全て把握して、そのユーザーの購入履歴などを知った上で対応できるようになる。
そうしたHybrisが志向するマーケティングとはどのようなものなのか。
現在のマーケティング技術環境には、実現のためのアプリケーションが多すぎると考えている。ユーザーにはパーソナライズされていない広告が届いている。マーケティング担当者が匿名の相手にたくさんのメッセージを送るため、ユーザーはメッセージ攻めに遭っているようなものだ。結果として企業のマーケティング活動で効果を上げることが難しくなっている。
そして、マーケティング担当者は(Webサイトやソーシャルメディア、モバイルなど)平均11もの縦割りで連携されていないチャネルを扱っている。マーケティング技術への包括的なアプローチが必要になっているのだ。
その解決策としてSAPが考えたのが「コンテキスト(Context)」を加えるということだ。そのときは、根底にあるデータが重要になる。
コンテキストはユーザーの様々な振る舞いから派生する。ユーザーの行動とは、Webやソーシャルメディアといった「オンライン」だけでなく、店頭やコールセンターなどの「オフライン」もある。ユーザーが数多くのチャネルを行き来して様々な行動をしている状況を理解することが重要になる。