アドビ システムズは2016年4月11日、プレミアム動画配信事業者向けの「Adobe Primetime」に新機能を追加し、日本市場で本格展開すると発表した。Primetimeは、アドビのデジタルマーケティングソリューション「Adobe Marketing Cloud」を構成するソリューションのうちの一つ。PCやスマートフォン、ゲーム機などの機器に動画コンテンツを配信でき、動画への広告の挿入や管理をする機能を持つ。
主なターゲットは、従来の放送局や有料のテレビ局など、デジタル動画をマルチスクリーンに展開したい企業である。米Adobe SystemsのJeremy Helfand氏(Vice President Adobe Primetime)に、日本での展開を聞いた。
デジタル動画でアドビが考える展開について教えてほしい。
デジタルを使い、効果のある広告を展開するために、メディアはいくつかの課題に直面している。アドビはこうした課題の解決を、データに基づいた広告によって支援していく。
視聴者の「テレビ」の視聴スタイルは、ここ数年大きく変わっている。その一方で、「Hulu」や「Netflix」といった、数年前にはなかった「オーバーザトップ(OTT)」と呼ばれるプレーヤなどが参入したことで、環境も変化した。
視聴者は高速なネットワークを使って、PCやスマートフォン、タブレット、ゲーム機などの様々な機器からテレビ番組や映画といった動画コンテンツを楽しんでいる。消費者は、自分が好むタイミングや機器、場所からコンテンツを観たいと考えている。
こうしたニーズはメディアだけでなく、デジタルマーケティングを実践する企業や広告主にも望ましいことだ。個々のコンテンツに思い入れを持った消費者に、適切なタイミングで、よりパーソナライズされた広告を配信できるからだ。
ただしこの環境を企業が単独で手に入れるには、いくつかのハードルがある。そこを支援するのがアドビの役割だと考えている。
日本市場で本格展開をする狙いは。
日本でネット動画広告の視聴は30%以上で成長しており、しばらくは2桁の成長が続くと見込まれている。利便性が高まり、視聴するデバイスが増えるほど動画や広告の消費が増えていく。
ある調査によると、2016年内にコンテンツを視聴するためのデバイスの割合で、スマホとタブレットがデスクトップを上回るという。このトレンドが続くと、全てのコンテンツ視聴に占めるデスクトップの割合は25%以下になるという。
アドビは動画市場で独自のポジショニングを築いてきた。Adobe Marketing Cloudによって、コンテンツや広告の配信およびパーソナライズを可能にし、マーケターが視聴者にリーチできるようにする。
現在、動画市場にはどんな課題があるのか。
まず始めは「分断化」だ。視聴者が使うデバイスが違っても、メッセージに一貫性を持たせなくてはならない。
次の問題は「収益化」だ。コンテンツの中でどのような広告体験が必要とされて、その効果をどう測定するかが課題となる。
最後に「パーソナライゼーション」だ。データを活用して、消費者に最適化した広告体験やマーケティングメッセージを提供すべきかということだ。
Primetimeの日本市場での今後の戦略について聞かせてほしい。
日本市場では主に三つの事柄に注力していきたい。具体的には、1.機能強化、2.ローカルのリソース活用、3.パートナーのエコスシステム強化だ。
1の機能強化の一つが「HTML5」への対応だ。現時点では端末の機種やブラウザーによってHTML5へのアプローチやバージョンが異なっており、ここに分断化が発生している。