ガートナーは2017年2月下旬に開催した「ガートナー カスタマー 360 サミット 2017」で、「顧客エンゲージメント・ハブ(カスタマーエンゲージメント・ハブ、CEH)」を複数のセッションで解説した。
CEHとは「全インタラクション・チャネルを横断し、人間/人工エージェント/センサを介して、コンテキストに基づくパーソナライズされた顧客エンゲージメントをサポートする」もの(同社資料から抜粋)。CEHの考え方について、ガートナー リサーチ バイスプレジデント 兼 最上級アナリストのマイケル・マオズ氏に聞いた。
2016年12月に、ガートナー ジャパンが公開した「日本におけるCRMのハイプ・サイクル:2016年」で、「顧客エンゲージメント・ハブ(CEH)」を黎明期にプロットしていた。その理由は。
理由は二つある。一つは、CRMメガベンダーであるOracleやSalesforce.com、Microsoft、SAPが現在、CEHを提供できていないことがある。新旧のシステムが混在している環境では、それぞれに互換性がなかったりとか、相互にコミュニケーションを取れなかったりする。こうした技術的な視点から、黎明期にプロットしている。
しかも多くの企業は、マーケティングの人はマーケティングが大事、ITシステムの人はITシステムが大事、セールスはセールスが大事というように“サイロ化”している。CEHが正しく機能するためはトータルで企業を指揮する人物が必要になる。しかし今日はまだ、全体を指揮ができる人物が存在していないというのが二つ目の理由だ。
CEHという考え方が現れたのは、5年前でもなく10年前でもなく、なぜこのタイミングなのか。
「製品の時代」から「エクスペリエンスの時代」に転換していることがある。例えば私は腕時計が好きで買って持っているが、私の子どもは時間が分かればそれでいいという。
このようにかつて多くの人は製品というものを買っていたが、多くの人がエクスペリエンスを求めるようになった。
既にCEHを提供できている企業はあるか。
例えばAppleがある。実店舗でのエクスペリエンスからWebでのエクスペリエンス、マーケティングからのエクスペリエンス、サービスのエクスペリエンスまで、消費者が得られるエクスペリエンスにはしっかりとした調和が取れている。