戦略アプリの開発ニーズを見越し、ベンダーはPaaSの強化を進めている。先行するAWSを、IBMやセールスフォース、オラクルやマイクロソフトが追う。焦点は、ビッグデータ分析関連のミドルウエアの充実だ。激化するPaaSの陣取り合戦、各社の動向をひも解く。
海外大手ベンダーを中心に、PaaS強化に向けた動きが急だ(表2)。米IBMは2014年10月27日(米国時間)に、インメモリーのカラム型データウエアハウス(DWH)の「dashDB」を発表。10月14日には、米セールスフォース・ドットコムがデータ分析用のPaaS「WAVE」を発表するなど、大手ベンダーが続々とデータ分析向けのPaaSを投入している。
IaaSの価格競争に疲弊したベンダーが次なる市場とターゲットに定めたのが、PaaSだ。ビジネスに貢献できる戦略アプリを生み出すために、ミドルウエアを充実させている。中でも、多くのベンダーが力を注ぐのが、ビッグデータ分析関連のミドルウエアである。各社の動向を見ていこう。
PaaSシフトを進めるAWS
データ分析ミドルウエアの充実で先頭を走るのがAWSだ。同社は提供するクラウドサービスについてIaaS、PaaS、SaaSといった区分はしていない。しかし、新規アプリの開発に役立つデータベースなどのミドルウエアやサービスを矢継ぎ早に投入しており、実質PaaSシフトが進んでいる。
例えば、データウエアハウス(DWH)「Amazon Redshift」やストリーム処理「Amazon Kinesis」、Hadoopを提供する「Amazon Elastic MapReduce」やNoSQLデータベース「DynamoDB」などのサービスを用意する。ユーザーは、こうしたミドルウエアを利用し、データ分析アプリを開発できる。ただし、ミドルウエアを使いこなしアプリ開発をユーザー企業だけで行うのはそう簡単ではない。
クラウドSIがアプリ開発を支援
クラウドSIがアプリ開発を支援ンテグレーション(SI)を手がける、サーバーワークスやクラスメソッドなどだ。例えばスシローやガリバーのKinesis活用は、クラスメソッドがプロジェクトの設計やデータ分析基盤の構築を担当している。スシローの田中覚情報システム部長はクラスメソッドの支援を受ける利点をこう強調する。「クラウドサービスは次から次へと新しいサービスが登場するため、サービスの目利きや改善方法の提案をしてくれる存在としてありがたい。サポートが付く点も有効だ」。
AWSの各種サービスを活用するためのサービスもある。米フライデータの「FlyData」は、Redshiftにオンラインのログなど、多様なデータを自動的かつ継続的に転送する機能を備える。テラスカイのサービス「SkyOnDemand」のように、AWSとForce.comなど異なるクラウド間でデータフォーマットの違いを吸収して変換するサービスもある。
アマゾン データ サービス ジャパンの玉川憲技術本部長は、これらSIやサービスに対して「AWSの普及に伴いSIを手がけるパートナー企業やAWSを補強するサービスが増えたことで、ユーザーがよりAWSを活用しやすい環境が整ってきた。AWSユーザー同士がノウハウを共有し合うユーザー会の発足も、さらなる好循環を生んでいる」と話す。