ビッグデータ分析やモバイル向けアプリの開発にPaaSを導入する企業が増えている。売り上げ増や、顧客満足度の向上など、ビジネスに直接貢献していることが特徴だ。ミドルウエアやフレームワークの威力が、開発スピードを加速する。いち早くPaaS活用に踏み切った先進企業9社の導入成果を見よう。

あきんどスシロー:店舗状況をリアルに把握

 ビッグデータ分析で特に注目を集めているPaaSが、米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)の「Amazon Kinesis」だ。Kinesisはあきんどスシローとガリバーインタナショナルが利用している。まずはKinesisをビジネスに生かす2社の事例を紹介しよう。

 Kinesisでビッグデータ分析用の基盤を構築し、店舗オペレーションの効率化を図っているのが、回転寿司チェーン店を展開する「あきんどスシロー」だ。分析基盤の要にはKinesisと、同じくAWSのデータウエアハウス(DWH)サービス「Amazon Redshift」を利用する(図2)。

図2●あきんどスシローが実践するKinesis、Redshift活用例
図2●あきんどスシローが実践するKinesis、Redshift活用例
すし皿の情報を収集・分析し、ネタの廃棄率を下げる
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 スシローはKinesisを使い、すし皿に貼り付けたICタグから得られる情報を、ほぼリアルタイムに収集できる仕組みを作った。Kinesisは「シャード」という単位で大量のデータを高速に受信するサービスだ。シャード1個で1秒間に最大1メガバイトのデータを受信できる。スシローの田中覚情報システム部長は、Kinesisの手軽さをこう語る。「Kinesisを使うことで、全店舗ですし皿のデータを吸い上げる仕組みを手軽に構築できた。利用料も安価でシャード1個の月額料金は1500円ほど。400近くある全店舗で1秒間に最大6000件を処理するのに余裕を見て8個のシャードを使っているが、月額1万2000円で済む」。

 Kinesisが受信したデータは、AWSの仮想サーバーサービス「Amazon EC2」上で別途開発したアプリ「Kinesis app」を使ってフィルタリングする。そのデータをRedshiftに取り込んで分析を実施。分析結果をBI(ビジネスインテリジェンス)ツールで可視化する。「これまでは店舗全体ですし皿をいつレーンに載せて、いつ売れたかまでのデータしか取れなかった。Kinesisを使うことで、店舗内の各エリアのどのレーンですし皿がどう流れたのかという、より詳細な情報が取れるようになった」(田中氏)。

 Kinesisからのデータを分析し、従来よりもネタ出しのコントロールを細かく調整できるようになった。「キッチンに残っているネタの量とその日売れる予測に対して、どのネタが上振れしたり、下振れしたりしているかがほぼリアルタイムで把握できる。下振れしているネタに対して店内放送でテコ入れするといった対策を現場に促すことで、ネタの廃棄率をさらに低減できる」(田中氏)。

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