塩漬けシステムを近代化したい。そんなニーズはどのIT現場にもある。だが要件定義から始める新規開発は、多大なコストと時間が掛かる。そこで鍵を握るのが、にわかに注目されてきた「モダナイゼーション」だ。

 「もうあの要件定義は経験したくない」―。ワコールでシステム開発プロジェクトを指揮する大西輝昌氏(情報システム部 グループ情報システム課 課長)は、約10年前の大規模なシステム再構築プロジェクトをこう振り返る。

 メインフレームからオープンシステムへと切り替えるプロジェクトだった。本社内の一室をプロジェクトルームとし、そこでメンバーとともに缶詰め状態の日々を送った。

 苦しんだのは要件定義である。開発期間には3年を要し、その多くを要件定義に費やした。無理はない。「数十年使った業務システムがベースだったので、機能要件から見直した。当然、あらゆる要求が各部署から挙がってきた」(大西氏)。

現行機能をそのまま踏襲

 あれから10年。大西氏ら開発チームは、ERPパッケージ「Oracle E-Business Suite 11」の保守切れを機に、2015年春をメドにグループの全50システムの統合に乗り出した。

 注目すべきはその手法だ。約9割のシステムは要件定義を実施せず、現行機能をそのまま踏襲する道を選んだ。具体的にはLinuxサーバーとVMwareを使ったプライベートクラウド環境を構築。そこに新ERPパッケージ「Oracle E-Business Suite 12」と、統合データベース「Oracle Exadata」を導入した。現行システムの機能は、その環境にほぼそのまま移行する(図1)。実際、2014年春には最も規模が大きい財務管理システムを載せ替えた。

図1●塩漬けシステムを近代化するモダナイゼーション
図1●塩漬けシステムを近代化するモダナイゼーション
現行機能を踏襲する開発手法「モダナイゼーション」が広まっている。ワコールでは現在、全50システムの約9 割を、要件定義を実施しないモダナイゼーションで移行中だ。コストの圧縮につなげている
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