システム運用効率化を目的に注目されてきたITSMS(ITサービスマネジメントシステム)を使うことで、システム部門が企業内で業域を広げている。本連載の第2回で解説したように、一部の企業ではシステム部門がITSMSを活用して、その企業のビジネスに貢献する動きを始めている。連載最終回となる今回は、ITSMSの活用のステップを3段階に分け、ITの枠にとどまらないサービスマネジメントに手を広げ、各部門の業務改善を手助けするシステム部門の将来像を描く。

図●ITSMS活用の三つのステップ
図●ITSMS活用の三つのステップ
[画像のクリックで拡大表示]

 ITSMSの活用は大きく三つのステップに分けられる。一つめが、システム部門が通常業務の標準化や自動化を図る「システム運用の効率化」。二つめがITサービスを社内に提供する窓口として機能し、サービス内容の見える化やサービス活用の導入支援をする「ITサービスプロバイダーとしての機能充実」、そして三つめが人事や営業、経理といった他部門と協力して社内業務を変革する「社内の他業務への展開」である。

 こうしたステップを経てシステム部門は社内システムを担当する部署から、社内の多様なサービスをマネジメントする部署に生まれ変わる()。

ITSMSの最初のステップは、運用効率化

 ではまず、「システム運用の効率化」からみていこう。これまでも本連載で述べてきたように、システム部門はITSMSを導入することで、システム運用の標準化や自動化を実現し、業務の効率化を図っている。

 ITSMSは、サービスデスクやインシデント管理、構成管理などIT運用に関する機能を集約することで、稼働中の複数のシステムを一元的に管理している。これまで複数のシステムを個別の運用ツールで管理してきた企業は、管理の一元化によって手間や時間を削減でき、効率的な運用が可能になるだろう。

 具体的にはITSMSの「ダッシュボード機能」を使えば、複数にまたがるシステムの稼働状況を俯瞰的に把握できる。それぞれの指標を、担当者があらかじめ設定した通り自動的に収集し、見やすい形でアウトプットしてくれる。システムに関わる定型のレポートを毎月決まったタイミングで生成して、関係部署に送付するといった運用も可能だ。

 特定の条件でシステム資源を絞り込むことも可能だ。あるサーバーアプリケーションの特定のバージョンで脆弱性が見つかった場合、該当バージョンを使用中のサーバーだけをリストアップして、パッチを適用するといった対応が容易にできる。

この先は日経クロステック Active会員の登録が必要です

日経クロステック Activeは、IT/製造/建設各分野にかかわる企業向け製品・サービスについて、選択や導入を支援する情報サイトです。製品・サービス情報、導入事例などのコンテンツを多数掲載しています。初めてご覧になる際には、会員登録(無料)をお願いいたします。