ITサービスマネジメント(ITSM)とは、より品質の高いITサービスを提供するための管理や最適化など様々な活動のこと。ITSMを実現するための仕組みが「ITSMシステム」(ITSMS)であり、クラウドや自動化といった技術の進化に即応して、その利便性を高めている。

図●ITILのサービスライフサイクル
図●ITILのサービスライフサイクル
出展:ITIL 2011 edition
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 ITSMのフレームワークを示す代表的な国際標準が「ITIL(information technology infrastructure library)」で、ITSMに関わる一連のベストプラクティス(模範例)を体系化している。ITILの最新版はITIL 2011 editionで、「サービスストラテジ」「サービスデザイン」「サービストランジション」「サービスオペレーション」「継続的サービス改善」の5分冊で構成している。2007年に刊行された前バージョン(ITIL V3)が運用品質を高める機能を強調していたのに対し、最新版はサービスのライフサイクルという視点を取り入れ、ITサービスに関わる戦略的思考を強化した()。

 日本企業のシステム部門がITILを導入した当初はまだITIL V2の時代で、運用現場の多くはサービス品質の改善や属人性を排除する手段としてITILを活用していた。その後、ITILは経営/事業戦略を支える、ITサービス戦略を包含する方向に舵を切ったが、「日本企業ではITシステム部門の運用管理から先に広がっていない。欧米ではITSMを基にIT部門の在り方などを検討している」(itSMF Japan)という。背景には、多くの日本企業でIT部門がコストセンターといった位置付けにあり、ITを活用したビジネスによる価値創造といった役割を担っていないことなどがある。

 ただこの数年企業のITインフラを取り巻く環境が変化したことで、ITSMの役割に微妙な変化が現れている。一つは企業が利用するITインフラが「クラウド」に移行し始めたことで、IT部門が携わっていたオペレーションの一部が要らなくなり始めたことがある。さらに「自動化」によって、従来は人が介在していた監視や運用などの作業を機械に任せられるようになり、人手を介さなくてよくなってきた。こうした作業から解放されたことで人的リソースに余裕が生まれ、そのリソースは戦略的なサービス戦略の策定などに活用できるようになっている。

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