「ワークスタイル変革」は、ベンダーにとっては自社の製品/サービスを売り込む格好のキーワードでもある。自社製品のメリット/デメリットを理解するために、ベンダーの多くはユーザー企業に先駆けて、新しい働き方を実践している。売り手であれば、社内の抵抗もなくスムーズに改革が進んだかと思いきや、実際はそうでもなかった。先行者としてのベンダーが感じた壁や、ワークスタイル変革に踏み切った動機を紹介する。
実態や評価の把握に懸念
ビデオ会議システムを手掛けるポリコムジャパンが、全社員を対象にテレワークを導入したのは2011年の東日本大震災がきっかけ。「当時の日本法人の社長がテレワークの対象を全社員に広げることに疑問を持っていた」(ポリコムジャパン ビジネスオペレーションズシニアマネージャーの藤井浩美氏)ため、震災前は全社員を対象にしていなかった。現在は、顧客にテレワークを推奨する同社ですら「当時は本当に働いているのか、評価はどうするのかという懸念があった」(藤井氏)。
ところが、「震災時はちょうど米国本社とビデオ会議中で、こちらの状況が正確に伝わった」(藤井氏)。その後、本社からの指示で強制的に全社員がテレワークを実施することになった。現在は、どの社員でも上長の許可があればテレワークが認められる。同社はこの取り組みを「ダイバーシティ推進戦略」と呼ぶ。
テレワークのために、モバイルPCやVPNなどの情報インフラを整備し、運用ルールなども細かく定めた(図11)。基本的には「部門長が部下の仕事の進捗さえ確認できていればいい」(藤井氏)というシンプルな考え方だ。1年の初めに各社員がやるべきことを上司と相談し、四半期ごとに進捗を自己申告する。在席状況はLyncで確認。労働時間中のプレゼンス表示を義務化した。