ネット通販拡大や配送速度向上など大きな変化に直面する物流ビジネス。それを支える倉庫事業では、システムの役割が急速に重みを増している。三菱倉庫は49億円をかけて新システムを開発し、国内外の全倉庫に展開する。顧客の要望に迅速に応えられるようにすることで、新規案件の獲得数を増やす。

 「顧客の要望に迅速に応えられるシステムを武器に、新たなビジネスを獲得する」。こう語るのは、三菱倉庫 倉庫事業部 業務課長 品質管理グループリーダーの渡辺周平氏。同社は2014年、同社の倉庫保管/配送センター業務を支える新システム「G-MIWS」を稼働させた(図1)。全国46カ所の倉庫のうち、既に3カ所に導入。2016年度末までに、全ての倉庫に導入する計画だ。

図1●三菱倉庫が刷新した倉庫システム
図1●三菱倉庫が刷新した倉庫システム
49億円を投資、コスト削減や新規案件受注増加を狙う
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 全倉庫への展開を含めたG-MIWSへの投資額は、総額49億円に上る。2013年度の同社の営業利益121億円のほぼ4割に達する。これほどの投資に踏み切った背景には、物流を巡る事業変化の激しさがある。

 倉庫事業の主業務は、荷主である顧客企業の貨物を保管し、指示に応じて出荷することだ。同社のある倉庫では、10社ほどから預かった数千種類の品物を保管。1日当たりの入庫数は2万~4万箱、出庫数は4万~5万箱に達する。

 顧客企業から入庫や出庫の指示を受けたり、顧客企業に対して在庫を報告したりといった手続きは、EDI(電子データ交換)によって行われる。繁忙期には、1日当たりのEDIの件数は1社につき千件ほどに上ることもある。

 倉庫業者として選ばれるためには「顧客企業が指定する期日までに、EDIによるやり取りを実現することが絶対条件」(渡辺氏)。EDIの稼働開始までに半年程度しかないケースが多く、顧客の要望に迅速に対応できるシステムが不可欠だ。

 25年にわたって使い続けてきた既存システム「MIWS/MESH」では、それが難しくなっていた。メインフレーム上で開発した独自システムで、様々な要望に応じて改修を繰り返した結果、肥大化/複雑化が進んでいた。「改変を加えようとしても影響範囲が広く、小回りが利きにくかった」(情報システム部 開発課長 有賀嘉裕氏)。

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