科学技術振興機構東京本部(サイエンスプラザ)
科学技術振興機構東京本部(サイエンスプラザ)

 「科学技術創造立国」を推進するために1996年に設立された科学技術振興機構(JST)。科学技術の研究開発動向や社会での必要性を調査して、国の戦略立案に提言する組織だ。

 このJSTが2015年5月、「J-GLOBAL knowledge」という新しいサービスを始めた。JSTが持つ膨大なデータベースのうち、「化学物質」に関するデータを研究者や研究機関、企業などに無償で公開。多角的な検索を実現していることもあり、好評を得ている(図1)。

図1 科学技術振興機構が2015年5月に公開した「J-GLOBAL knowledge」
化学物質を多角的に検索可能に
図1 科学技術振興機構が2015年5月に公開した「J-GLOBAL knowledge」
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 JSTは2012年9月にデータベース横断検索サービス「J-GLOBAL」を開始。今回のJ-GLOBAL knowledgeはその発展系になる。「ここまで大量のデータを扱った事例がこの世に存在しなかった」(JST情報企画部情報分析室知識インフラ担当調査役の松邑勝治氏)こともあり、手探りでシステム構築を進める必要があった。

文献データは3600万件超

 JSTのミッションは3つある。「研究開発戦略を立てる」「科学技術イノベーションを興す」、そして「科学技術イノベーションの基盤を作る」だ。J-GLOBALのデータベース整備はこのうち3番目の目的を果たすために進められてきた。

 JSTは50年以上にわたって国内の論文データを収集しており、これまでに蓄積されている論文総数は3600万件を超える。

 集められたデータを研究者が使いやすいように「研究者」や「文献」、「特許」、「研究資源」、「資料」など10項目のデータベースとして整備し、公開したものがJ-GLOBALである。

 J-GLOBALが持つデータ量は膨大で、例えば研究者は約24万人、文献は3626万件、特許は1151万件に及ぶ。こうした数多くのデータを横断検索できるのがJ-GLOBALの特徴だ。

 例えば有機化合物「ニトロベンゼン」で検索すると、研究者は74件、文献は8881件、特許は790件などと表示される。研究者の項目として用意された所属大学や職名、研究分野、所属学会などで絞り込みも可能。研究者は研究を進めるに当たって知りたい情報を容易に入手できる。

 「一昔前は研究者が研究テーマを探したり、研究に関する先達の情報を調べたりする際には図書館が利用されていた。気軽にインターネット経由で検索できる仕組みを整えた」とJST情報企画部情報分析室知識インフラ担当主査の木村考宏氏はJ-GLOBALの意義について語る。

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