東日本大震災の復興需要や景気回復、2020年東京オリンピック・パラリンピックといった要素が重なり合って、国内の工事現場は人手不足に陥っている。その追い風と向かい風の両方を受けている一社が大林組だ。
2015年3月期の業績は売上高が1兆7739億円(前年同期比10.0%増)、経常利益が599億円(同49.3%増)と絶好調だった。だが、人手不足や労務・資材費高騰などを織り込んで、今期の業績は売上高はほぼ横ばい、経常利益は減益を見込む。
人手不足を打開する武器として工事現場に導入したのがiPadだ。需要拡大が顕著になり始めた2012年8月、大林組は工事現場で施工管理を行う現場監督のほぼ全員に約3000台のiPadを導入した。その後、内勤の技術者や協力業者にも導入範囲を拡大し、2015年5月末時点で約5700台を運用する。耐久・防水性を高める独自のケースやライトも用意した(図1)。
iPad導入は、白石達 代表取締役社長のトップダウンで決まったという。堀内英行グローバルICT推進室 技術課長は、「オフィスや工事現場の現地事務所でIT化が進む一方で、現場監督の仕事では紙による作業が残った。これが効率化を妨げていた」と話す。
当初は、検査など定型業務の電子化のためのアプリを独自開発して利用。順次アプリを充実させてきた。2015年5月からは「野帳(やちょう)」と呼ばれる手帳の電子化を通じて、非定型業務の電子化も進めている。
大林組のiPadプロジェクト推進メンバー。(左から)技術本部 技術研究所 生産技術研究部の鈴木理史主任、グローバルICT推進室の堀内英行技術課長、同室の川畑徹部長