「顧客が来店するのを待ってはいられない。渉外活動を強化し、“攻め”のセールスを展開する」──。北洋銀行リテール戦略部リテール企画課の佐々木勉管理役はこう語る。
北洋銀行は2015年4月、CRM(顧客情報管理)システムとDWH(データウエアハウス)システムを新たに構築した。投資額は非公開。渉外担当者と営業店舗の接客対応者に合計1200台のiPad Air(以下、iPad)を配布し、iPadからCRMに直接アクセスできるシステムを構築した(図1)。
狙いは、顧客の生活に起こる重要なイベントをトリガーに、マーケティングを仕掛けるEBM(Event Based Marketing)の強化だ。顧客の取引データを分析して、臨時収入や就職、住居購入、結婚などのイベントを判定。これらのイベントに最適な金融商品を、顧客にいち早く提案することで、売り上げ拡大を目指す。
全国174カ所に営業店を展開する北洋銀行は、資金量7兆3496億円、貸出金5兆6219億円でともに道内トップを誇る。
同行が頭を悩ませていたのは、営業店への来店客が年々減少していることだ。従来のマーケティングは主に、営業店の担当者が、顧客と対面して接客する中で、顧客動向を把握する形である。来店頻度が下がることで、顧客動向を把握することは難しくなった。
リテール戦略部の西崎進部長は「2000年代に入ってから、営業店を訪れる顧客は年々減少している」と話す。インターネットバンキングやATM(現金自動預け払い機)の普及で、顧客は営業店の窓口を訪れなくても、金融サービスを受けられるようになったためだという。
西崎部長は「顧客のライフスタイルは大きく変化している。これまで営業店中心に実施してきたマーケティング施策から、脱却する必要がある」と語る。そのために同行は、日々、最新の取引情報を基に顧客動向を分析、渉外活動を支援するシステムを構築した。