マーケティングオートメーションの精度を高めるため、データ分析に基づいたスコアリング設計の重要性や、分析のための準備と実際の分析手法などについて考察する本特集。第3回はニューラルネットワークモデルによるスコア値の算出を解説します。

スコアリングの有用性評価

 受注率、商談リードタイム、受注金額など設定したスコープにおいて、どのような履歴データと相関がありそうかをまず確認します。ここで、設定したスコープと各履歴データに相関性があまり見られなければ、スコープや要件の再設定が必要です。ここでは、相関性分析の例をご紹介します。

【例1】<BR>履歴データと受注金額は相関性があるか?<BR>有効結果例:受注金額は履歴データ、特にWEBアクセス履歴に相関する
【例1】
履歴データと受注金額は相関性があるか?
有効結果例:受注金額は履歴データ、特にWEBアクセス履歴に相関する
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【例2】<BR>WEBアクセスが多いと商談のリードタイムは短くなるか?<BR>有効結果例:WEBアクセス履歴が多いほど商談リードタイムは短くなる </p>
【例2】
WEBアクセスが多いと商談のリードタイムは短くなるか?
有効結果例:WEBアクセス履歴が多いほど商談リードタイムは短くなる

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スコアリングシミュレーション

 次に、目的のリードに対して影響する因子の抽出を行います。以下に、今回採用した手法についてご紹介します。

(1)ディシジョンツリーによるキャンペーンの影響度確認

 リードとの各接点の影響度を確認します。リードが商談化するまでの間には、タイミングや興味度など様々な影響因子がありますが、その中でも、実施キャンペーンの影響度を大まかに得ることで、その後の分析の方向性を決定します。

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 影響度の大まかな把握方法としては、ディシジョンツリー分析が視覚的にも把握しやすいためお勧めです。ディシジョンツリーは、データマイニングで良く用いられる方法で、ある目的にそってデータを分類するためによく使用されます。

商談化フラグを目的変数としたディシジョンツリーの例
商談化フラグを目的変数としたディシジョンツリーの例
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 たとえば、全リードのうち、商談が発生したリードに対する資料請求、WEB問い合わせ、セミナー申込、オンラインデモ申込、展示会来場、WEB閲覧などの履歴の影響因子を把握したいとします。この場合、分岐の発生順として、WEBアクセスが複数以上か否かが第一分岐として、さらにWEBアクセスが18以上の場合に、商談化した割合が増加しています。さらに、WEBアクセスが18以上の場合で、WEB問い合わせ、資料請求がある場合に商談化したリードの割合が高くなることがわかります。

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 したがって、WEB問い合せや資料請求に対しては必ずフォローコールを実施するとして、スコアの対象から除外します。また、影響度の低いキャンペーン履歴のみのリードをWEB閲覧に誘導することで、より商談化率を高めることができるようになるといえるでしょう。

(2)ニューラルネットワークモデルによるスコア値の算出

 次に、ニューラルネットワークモデルによりスコア値の算出を行います。ニューラルネットワークは、脳神経系をモデルにした情報処理システムのことで、詳細は専門分野の解説にゆずるとして、このモデルはぼう大な量の非線形のデータの中から要因間の複雑な関係を発見する際に適した数学モデルです。複雑なマーケティング施策の結果、リードに関連付けられている様々なタッチポイントのうち何が影響しているのかを探索し、影響度を測るという意味では、有効な手法といえるのではないでしょうか。

 ではここから、ニューラルネットワークモデルによるスコア値設定の概要についてご紹介します。リードが関連付けられているWEB閲覧やセミナー参加、オンラインデモといった各種履歴の影響度数を数値化してみます。

(2-1)目的変数の決定

 はじめに、『どんなリードが良いリードなのか?』という評価基準を設定します。

 今回は、リードのうちで商談化したリード(商談フラグ=1となったもの)を良いリードとします。

(2-2)入力変数の選択

 前述のディシジョンツリー分析によって明らかになったスコア対象の履歴の回数を入力変数とします。WEB閲覧履歴については、1ページ単位での比重がその他キャンペーンと比較するときわめて低くなるため、まずWEB閲覧履歴総計で他のカテゴリと比較します。

 次回も引き続き、スコアリングシミュレーションを解説します。

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