最初から精度の高いスコアルールを設計するには、キャンペーンごとの商談化・成約率の把握や、商談化あるいは成約したリードの属性や行動履歴の分析と傾向の探索が近道です。今回は一例として、シャノンが実際に自社データを活用して試したスコアルール設計手法を紹介します。
設計手順と要件定義
スコアルール設計にはさまざまな手法があると思いますが、今回は、シャノンが実際に自社データを活用して試した手法を一例として紹介します。
まず、スコアルール設計の手順を確認しましょう。
- 要件定義(本章で説明)
- スコアリングの目的やスコープ、絞り込み要件と設定ルールなどを決定します。
- 分析用データの準備(次章で説明)
- 目的やスコープに必要な分析用データを準備します。
- スコアリングの有用性評価(第3回で説明)
- 商談談受注率、リードタイム、受注金額など、スコアリングにもとづく最終コンバージョンとスコアリングの相関性を調査します。調査結果をふまえ、設定したスコープの妥当性を確認します。
- スコアリングシミュレーション(第3回、第4回で説明)
- ディシジョンツリーによるキャンペーンの影響度確認と、ニューラルネットワークモデルによるスコア値の算出、スコア値の検証を行います。
では要件定義から見ていきましょう。
スコアリングの目的やスコープ、絞り込み要件と設定ルールなどを決定します。ここでいくつかスコープの例を挙げてみます。
【スコープA】受注金額の高くなりそうなリードを抽出する
【スコープB】すぐ受注しそうなリードを抽出する
【スコープC】商談につながりやすいリードを抽出する
たとえば営業対応するリードを絞り込みたい場合はスコープAやBを、商談になりそうなリードを掘り起こしたい場合はCがスコープとして考えられます。
次に、目的やスコープに沿って要件を決定していきます。自社におけるリード評価軸の優先順位によって、要件が異なります。
リード評価軸 | 評価要素例 |
---|---|
製品・サービス | アンケート回答内容(興味関心分野など) |
閲覧したWEBページ | |
時間軸 | 直近アクセス日時 |
初回接触からの経過時間 | |
ターゲット属性 | 業種・業界 |
企業規模 | |
役職レベル | |
本気度 | メールURLクリック |
WEBアクセス回数 | |
各種キャンペーン申込履歴 | |
アンケート回答内容(導入予定時期など) |
商材が単独の場合は、ターゲット属性や本気度の比重が高くなることが考えられます。商材・サービスが複数の場合は、アンケート回答内容や閲覧した製品ページなどによってリードを絞り込むことが必要です。また、目的によっても要件が異なってきます。以下に例をあげてみましょう。
- 大量のリードから営業対応するリードを絞り込む場合は、対象となるターゲットの業種や企業規模、アンケート回答履歴を活用、また成約率・成約金額の高いキャンペーンなどを要件に盛り込む。
- 商談につながりやすそうなリードを掘り起こす場合は、商談化したリードが多く閲覧したWEBページなどを要件に盛り込み、さらに初回や最新接点の日付でリードを絞り込む。
この場合、資料請求や問い合わせなどの商談発生率が高いキャンペーンへ申し込んだリードは、既にフォロー済みという可能性が高いため、ルールから除外した方がよいかもしれません。
上記のような要件を満たすスコアルールを設計するためには、日頃から施策毎の商談発生率や受注率、フォローのフロー全体を把握しておく必要があります。だいたいの要件が見えてきたら、細かいスコア値設定のためのデータ分析を進めます。
スコープに合致した分析用データの準備
スコープが決定したら、必要なデータを準備します。
準備すべきデータの期間ですが、古すぎるデータはあまり有益とは言えませんが、季節性などをとらえるためには1年以上の期間のデータを準備することをお勧めします。本資料では、2年半分のデータを使用しています。
前章でご紹介した各スコープについて、分析に必要だと思われるデータをまとめます。
企業属性データを保有していない場合は、企業情報を購入し、リード情報とマッチングすることも可能です。スコープCの場合は、商談につながらなかったリードの傾向も必要であるため、自社で保有している全リードの各履歴データが必要です。
スコープ | データ |
---|---|
【スコープA】受注金額の高くなりそうなリードを抽出 | 成約したリードの属性データ(役職や業種、企業規模など) |
成約したリードのキャンペーン申込履歴データ | |
成約したリードのWEB閲覧履歴データ | |
案件データ(商談作成日、受注日、受注金額など) | |
【スコープB】すぐ受注しそうなリードを抽出 | 商談化したリードの属性データ(役職や業種、企業規模など) |
商談化したリードのキャンペーン申込履歴データ | |
商談化したリードのWEB閲覧履歴データ | |
案件データ(商談作成日、受注日、受注金額など) | |
【スコープC】商談につながりやすそうなリードを抽出 | 自社で保有する全キャンペーン申込履歴データ |
自社で保有する全WEB閲覧履歴データ | |
キャンペーン履歴もしくはWEB閲覧履歴が紐づくリードの属性データ(役職や業種、企業規模など) |
次に、用意したデータを、場合分けや分析がしやすいように変換・ラベル化を行います。
WEB閲覧履歴や業種、企業規模などにおいて、大まかな傾向をつかむためにラベル化を行います。たとえば、膨大なWEB閲覧履歴はWEBサイトのページタイトルやディレクトリ単位などで大まかに分類します。企業規模も、従業員数や年商を5段階程度に分類することで、傾向がつかみやすくなります。
作業イメージ例は以下の通りです。
【WEB閲覧履歴データ】
- 製品ページについては細かく傾向を見るため、機能や価格といった階層単位でラベル化
- 企業情報ページについてはそれ以下の階層単位での傾向の把握は不要なので、企業情報ページ全体でまとめてラベル化
【企業属性情報】
- 自社のフォームで業種を獲得している場合、その選択肢を日本産業分類の大分類で分類・変換
- 従業員300人以上を大企業、それ以下を中堅・中小企業としてラベル化
- 売上1000億円以上を大企業、それ以下を中堅・中小企業としてラベル化
【キャンペーン申込履歴】
- ホワイトペーパー、セミナーなどのキャンペーンカテゴリでラベル化
- セミナーを「有料」「無料」で分類し、さらに製品カテゴリでラベル化
ラベル化を行う際、明らかにマーケティング活動とは関係ないページ(たとえば採用情報ページなど)やキャンペーンがあればスコア対象外とし、データから削除しておきます。
上記データを、スコープA、Bの場合は商談ごとに、スコープCの場合はリードごとに各キャンペーン申込数や各ラベルごとのWEB閲覧履歴件数を集計しておきます。
分析用データが準備できた段階で、分析作業の7割は終了しています。ラベル化のルールによって分析結果が変わることもあるので、あとで調整できるよう明文化しておくことが重要です。