最初から精度の高いスコアルールを設計するには、キャンペーンごとの商談化・成約率の把握や、商談化あるいは成約したリードの属性や行動履歴の分析と傾向の探索が近道です。今回は一例として、シャノンが実際に自社データを活用して試したスコアルール設計手法を紹介します。

設計手順と要件定義

 スコアルール設計にはさまざまな手法があると思いますが、今回は、シャノンが実際に自社データを活用して試した手法を一例として紹介します。

 まず、スコアルール設計の手順を確認しましょう。

  1. 要件定義(本章で説明)
  2. スコアリングの目的やスコープ、絞り込み要件と設定ルールなどを決定します。
  3. 分析用データの準備(次章で説明)
  4. 目的やスコープに必要な分析用データを準備します。
  5. スコアリングの有用性評価(第3回で説明)
  6. 商談談受注率、リードタイム、受注金額など、スコアリングにもとづく最終コンバージョンとスコアリングの相関性を調査します。調査結果をふまえ、設定したスコープの妥当性を確認します。
  7. スコアリングシミュレーション(第3回、第4回で説明)
  8. ディシジョンツリーによるキャンペーンの影響度確認と、ニューラルネットワークモデルによるスコア値の算出、スコア値の検証を行います。

 では要件定義から見ていきましょう。

 スコアリングの目的やスコープ、絞り込み要件と設定ルールなどを決定します。ここでいくつかスコープの例を挙げてみます。

【スコープA】受注金額の高くなりそうなリードを抽出する
【スコープB】すぐ受注しそうなリードを抽出する
【スコープC】商談につながりやすいリードを抽出する

 たとえば営業対応するリードを絞り込みたい場合はスコープAやBを、商談になりそうなリードを掘り起こしたい場合はCがスコープとして考えられます。

 次に、目的やスコープに沿って要件を決定していきます。自社におけるリード評価軸の優先順位によって、要件が異なります。

リード評価軸評価要素例
製品・サービスアンケート回答内容(興味関心分野など)
閲覧したWEBページ
時間軸直近アクセス日時
初回接触からの経過時間
ターゲット属性業種・業界
企業規模
役職レベル
本気度メールURLクリック
WEBアクセス回数
各種キャンペーン申込履歴
アンケート回答内容(導入予定時期など)

 商材が単独の場合は、ターゲット属性や本気度の比重が高くなることが考えられます。商材・サービスが複数の場合は、アンケート回答内容や閲覧した製品ページなどによってリードを絞り込むことが必要です。また、目的によっても要件が異なってきます。以下に例をあげてみましょう。

  • 大量のリードから営業対応するリードを絞り込む場合は、対象となるターゲットの業種や企業規模、アンケート回答履歴を活用、また成約率・成約金額の高いキャンペーンなどを要件に盛り込む。
  • 商談につながりやすそうなリードを掘り起こす場合は、商談化したリードが多く閲覧したWEBページなどを要件に盛り込み、さらに初回や最新接点の日付でリードを絞り込む。
    この場合、資料請求や問い合わせなどの商談発生率が高いキャンペーンへ申し込んだリードは、既にフォロー済みという可能性が高いため、ルールから除外した方がよいかもしれません。

 上記のような要件を満たすスコアルールを設計するためには、日頃から施策毎の商談発生率や受注率、フォローのフロー全体を把握しておく必要があります。だいたいの要件が見えてきたら、細かいスコア値設定のためのデータ分析を進めます。

スコープに合致した分析用データの準備

 スコープが決定したら、必要なデータを準備します。

 準備すべきデータの期間ですが、古すぎるデータはあまり有益とは言えませんが、季節性などをとらえるためには1年以上の期間のデータを準備することをお勧めします。本資料では、2年半分のデータを使用しています。

 前章でご紹介した各スコープについて、分析に必要だと思われるデータをまとめます。

 企業属性データを保有していない場合は、企業情報を購入し、リード情報とマッチングすることも可能です。スコープCの場合は、商談につながらなかったリードの傾向も必要であるため、自社で保有している全リードの各履歴データが必要です。

スコープデータ
【スコープA】受注金額の高くなりそうなリードを抽出成約したリードの属性データ(役職や業種、企業規模など)
成約したリードのキャンペーン申込履歴データ
成約したリードのWEB閲覧履歴データ
案件データ(商談作成日、受注日、受注金額など)
【スコープB】すぐ受注しそうなリードを抽出商談化したリードの属性データ(役職や業種、企業規模など)
商談化したリードのキャンペーン申込履歴データ
商談化したリードのWEB閲覧履歴データ
案件データ(商談作成日、受注日、受注金額など)
【スコープC】商談につながりやすそうなリードを抽出自社で保有する全キャンペーン申込履歴データ
自社で保有する全WEB閲覧履歴データ
キャンペーン履歴もしくはWEB閲覧履歴が紐づくリードの属性データ(役職や業種、企業規模など)

 次に、用意したデータを、場合分けや分析がしやすいように変換・ラベル化を行います。

 WEB閲覧履歴や業種、企業規模などにおいて、大まかな傾向をつかむためにラベル化を行います。たとえば、膨大なWEB閲覧履歴はWEBサイトのページタイトルやディレクトリ単位などで大まかに分類します。企業規模も、従業員数や年商を5段階程度に分類することで、傾向がつかみやすくなります。

作業イメージ例は以下の通りです。

【WEB閲覧履歴データ】

  • 製品ページについては細かく傾向を見るため、機能や価格といった階層単位でラベル化
  • 企業情報ページについてはそれ以下の階層単位での傾向の把握は不要なので、企業情報ページ全体でまとめてラベル化

【企業属性情報】

  • 自社のフォームで業種を獲得している場合、その選択肢を日本産業分類の大分類で分類・変換
  • 従業員300人以上を大企業、それ以下を中堅・中小企業としてラベル化
  • 売上1000億円以上を大企業、それ以下を中堅・中小企業としてラベル化

【キャンペーン申込履歴】

  • ホワイトペーパー、セミナーなどのキャンペーンカテゴリでラベル化
  • セミナーを「有料」「無料」で分類し、さらに製品カテゴリでラベル化

 ラベル化を行う際、明らかにマーケティング活動とは関係ないページ(たとえば採用情報ページなど)やキャンペーンがあればスコア対象外とし、データから削除しておきます。

 上記データを、スコープA、Bの場合は商談ごとに、スコープCの場合はリードごとに各キャンペーン申込数や各ラベルごとのWEB閲覧履歴件数を集計しておきます。

 分析用データが準備できた段階で、分析作業の7割は終了しています。ラベル化のルールによって分析結果が変わることもあるので、あとで調整できるよう明文化しておくことが重要です。

クラウド・コンピューティングの技術をコアに、企業のマーケティング活動をサポートする製品・ソリュ ーション・サービスを提供する。イベント・セミナー運営やマーケティング業務の効率化・自動化、リード マネジメントの最適化などを実現可能にするシャノンのプラットフォーム製品は、マーケティングキャンペーン、 企業向けセミナーから大規模イベント・展示会まで、年間 600 社以上の企業、累計 13万件以上の キャンペーンで採用されている。