本特集では、マーケティングオートメーションの精度を高めるため、データ分析に基づいたスコアリング設計の重要性や、分析のための準備と実際の分析手法などについて考察します。第1回はマーケティングオートメーションにおけるスコアリングの役割を解説します。
マーケティングオートメーションとは何か
モバイルやSNSなどの普及、テクノロジーの進化によるマーケティング手法の多様化を背景に、カスタマージャーニーは日々複雑化しています。
BtoBにおいては、オンライン施策への取り組みが加速する一方で、依然としてイベントや展示会、セミナーなどのオフライン施策も影響力が強いため、カスタマージャーニーはよりいっそう複雑化しています。
また、デバイスの多様化やマーケティングテクノロジーの進化によって顧客行動導線が容易にデジタル化されるようになり、行動履歴や購買履歴、導線データなどが個人情報と紐づけてリアルタイムに把握できるようになりました。さらに、データ解析/可視化技術の応用により、デジタル化された顧客導線の理解も進んでいます。
リアルタイムでのデータ取得・解析・可視化が進んだことで、属性や行動に基づいたコンテンツのレコメンデーションが可能になりました。最適なコンテンツを、最適なタイミングとチャネルで提供できればコミュニケーションの影響度が高まり、成果の向上が期待できると言えます。
とはいえ、最適なコンテンツを最適なタイミングで提供する煩雑なプロセスを手動で行うのはほぼ不可能であり、そのプロセスを自動化するのがマーケティングオートメーションです。つまりマーケティングオートメーションとは、顧客や見込み客に対して継続的なフォローを行い、関係を醸成・発展させ、営業可能なレベルにしてから営業プロセスへ引き渡すためのマーケティングプロセス、と言えます。
日本のBtoBマーケティングにおいても、マーケティングオートメーションへの関心や期待が高まっているようです。その背景には、「成果が見えない」「商談に結び付かない」「リソースがさけない」などの根本的な課題の解決に向けた、マーケティングオートメーションへの期待があると推測されます。
マーケティングオートメーションに含まれる機能
マーケティングオートメーションにより、何がどのように自動化されるのか整理してみましょう。
シャノンでは3つのポイントで自動化をとらえています。
- マーケケティングオペレーションの自動化
- 煩雑な「業務」を効率化・自動化する
- 行動データ取得の自動化
- カスタマージャーニーのすべてのタッチポイントデータを取得する
- データ管理の自動化
- 複雑化する履歴データを自動統合・マージする
マーケティングオートメーションを実現するには、オペレーションの自動化だけでなく、「いつ」「誰に」「何を」を知るためのデータの取得・管理が不可欠です。
ここで、一般的なマーケティングオートメーションの主な機能について、確認しておきましょう。
機能群 | 概要 |
---|---|
メールマーケティング | 対象セグメントに対して、あらかじめ設定したシナリオでパーソナライズしたメールを自動配信できる。最適なタイミングでリードをフォローすることができる機能 |
ランディングページとWEBフォーム | リードとして登録してもらうWEBフォームやランディングページがキャンペーンごとに自動生成・管理できる機能 |
マルチチャネルキャンペーン管理 | オンライン・オフライン、直接・間接を問わないコミュニケーションチャネルを組み合わせてリードをフォローするキャンペーンを実行・管理できる機能 |
リード管理 | リードライフサイクルを管理し、獲得から育成、商談までのプロセスにおけるリードの行動や履歴情報などを蓄積し、リードの属性情報とともに一元管理できる機能 |
スコアリング | リードに紐づく情報をスコアルール化し、リードの定量評価や優先順位付け、またマーケティング活動の検証に活用できる機能 |
CRM統合 | マーケティングツールとCRMシステムとをダイレクトに接続し、「リード管理」と「商談パイプライン管理」を連携する機能 |
ソーシャルツール | ソーシャルメディアと連携し、リードデータの取得や分析、ソーシャルキャンペーンの拡散などが行えるツール |
メールマーケティングやマルチチャネルキャンペーンを実施した結果の反応を数値化し、さらに企業の属性情報などとともに確度の高いリード抽出に活用するスコアリング機能は、マーケティング活動を効率的に成果につなげていくための役割を担っています。マーケティング活動の成果向上という課題解決に、なくてはならない機能と言えます。
スコアリングの主な目的としてよくあげられるのが、以下の2つです。
- 日々大量に発生するリードから、営業対応するリードを絞り込む
- 自社で保有するリードのうち、最近反応があったなど確度の高そうなリードを掘り起し対象として抽出する
国内BtoBマーケティングにおいては、日々大量のお問い合わせが発生しているマーケティング成熟企業は1.が重点課題となりますが、それ以外の大半の企業の方は2.に興味を持たれるケースが多いのではないでしょうか。いずれにせよ目的によって、スコアリングの要件が異なりますので、この点について次回以降で考察します。
データ分析に基づいたスコアルール設計のメリット
初めてスコアルールを設計する場合、これまでの経験や感覚をもとに成果が高いと思われるキャンペーンや行動履歴にまずはフラットに点数をつけ、リードを抽出するという方法が考えられます。抽出したリードに対しアクションを実施し、その結果によってスコア値調整を繰り返すことで、自社のベストプラクティスを導き出します。しかしこのやり方の場合、ベストプラクティスを導き出すまでにかなりの時間を要することは想定に入れておくべきでしょう。
最初からある程度精度の高いスコアルールを設計するには、キャンペーンごとの商談化・成約率を把握する、さらに商談化あるいは成約したリードの属性や行動履歴を分析し、傾向を探ることが近道です。
データ分析結果を根拠とするスコアルールは、社内において共通のリード評価基準となりえます。共通の評価基準を持つことで評価の『ゆれ』が無くなり、また、マーケティングおよび関連部門間でも評価に『ズレ』が無くなります。つまり、定量的なリード評価が実現できるというメリットがあります。また、分析結果に基づいて数値としてリードの確度を「見える化」することで、これまでの経験や感覚を検証することも可能になります。
では次回以降で、スコアルール設計やデータ分析手法について考察します。