「システムの大半をAWSへ移行する」―。ミサワホームの宮本眞一(企画管理本部 情報システム部長)は決断した。同社は2011年から、自社の全システムを対象にした再構築プロジェクトを進めている。その方針として掲げたのが、冒頭のAWSへの移行だったのである。

 このプロジェクトの目的は、ミサワホームグループ全体のIT統合。これまでグループ企業40社が個別に構築・運用してきたシステムを標準化して統合する。グループ企業の規模は、数十人から1000人規模までさまざまだ。統合スケジュールが流動的になる可能性もあった。宮本は「サーバーやストレージなどのシステムリソースがいつごろどれだけ必要になるのか見通しが悪かった。だからといって、余裕を持ってシステムリソースを確保するとコストが膨らむ」という課題を抱えていた。

 ここで目を付けたのがパブリッククラウドサービス(以下、クラウド)だった。「クラウドなら、柔軟にシステムリソースを増やせる」と宮本は考えた。

 メインのシステム基盤としてAWSを選定。2013年4月から次々と、AWS上に既存システムを移行したり、新規システムを構築したりしている。2014年5月9日現在、ミサワホームのサーバーの約3割はAWS上で稼働するまでになった(図1)。

図1●ミサワホームはAWSへのシステム移行を進めている
図1●ミサワホームはAWSへのシステム移行を進めている
[画像のクリックで拡大表示]

 ただ、オンプレミス環境での開発・運用しか経験のなかった情報システム部のエンジニアは、想定しなかった苦労に直面した。技術担当の森嶌浩之(企画管理本部 情報システム部 システム推進課 参事)は「AWSには独特の流儀が多い。それをきちんと理解しておかないと、トラブルに発展してしまう」と指摘する。実際、宮本や森嶌ら情報システム部のチームは、AWSの利用を開始してから三つの“想定外”に直面した(図2)。

図2●ミサワホームの情報システム部が直面した三つの“想定外”
図2●ミサワホームの情報システム部が直面した三つの“想定外”
[画像のクリックで拡大表示]

この先は日経クロステック Active会員の登録が必要です

日経クロステック Activeは、IT/製造/建設各分野にかかわる企業向け製品・サービスについて、選択や導入を支援する情報サイトです。製品・サービス情報、導入事例などのコンテンツを多数掲載しています。初めてご覧になる際には、会員登録(無料)をお願いいたします。