スマホとともに進化してきたソーシャルメディア。格安SIMや無料Wi-Fiの普及で、今後さらに利用者が増えていく。その結果として社会にどんな影響をもたらすのか。最終回は、数年後の未来の姿を予測してみたい。

 ソーシャルメディア普及の歴史は、スマートフォンに代表されるモバイル機器と歩みをともにしてきました。スマートフォンの機能が高度になるにつれSNSの使い方も多様化し、よりリッチでカジュアルなコンテンツが作り出され流通するようになりました。

 シニア層のようにその恩恵を受けていない人が多く存在していましたが、「格安SIM」といわれる低料金の通信サービスが登場するなど、すそ野を広げる動きが活発になってきました。今回はこうした通信環境の変化がソーシャルメディアの未来に与える影響について考えてみたいと思います。

格安SIMがすそ野を広げた

 「このアプリを使えば、自由にWi-Fi使えるんですか?」。先日、福岡市を訪れた際、大学生とおぼしき若者にこう話しかけられました。訪日観光客向けに日本電信電話(NTT)とJTBが共同で展開する公衆無線LANサービスについて取材していたときの話です。

 両社は外国人向けに観光情報を紹介する専用のスマホアプリを開発し、入手すると無料で使える無線LANのアクセスポイントを福岡市内に多数設置しました。限られた生活費から通信料を払っている日本の若者も、無料の通信インフラに強い魅力を感じている事実に気付かされました。

 彼らのような若者やシニア層を、モバイルの世界に引き込む三つの大きな動きが生まれています。順に紹介していきましょう。

 1番目はMVNO(仮想移動体通信事業者)です。当初MVNOが作り出したのは、リテラシーの高いモバイルマニアが2台目のスマホを持つ需要を満たすニッチな市場でした。しかし家電量販店やイオンを始めとする異業種参入が増え、割安な料金をウリにした格安SIMが次々と登場します。結果として、料金がネックでスマホを買うことをためらっていた初級者を取り込む受け皿へと成長していきました。

 実は格安SIMを利用するスマホ初級者の満足度は決して低くありません。調査会社MMD研究所によると、約6割のユーザーが使い勝手などに満足しているそうです。総務省は携帯サービスにおけるMVNOのシェアを、現在の5%から2016年には10%に引き上げる意向を打ち出しています。格安SIMの契約数は2014年末時点で241万契約ですが、2015年末には25.7%増の303万契約になるというICT総研の予測もあります。今後ますます格安SIMを使ってスマホの世界に飛び込む若者やシニア層が増えるのは、間違いないでしょう。

 2番目の動きは、各地で商工会や自治体が主体となって公衆無線LAN環境の整備を再び進めていることです。公衆無線LANが使える場所が増えることで、日本の通信サービスを契約していない外国人観光客にとって利用エリアが点から面へと広がります。現地消費を促すリッチな観光コンテンツを発信していく障壁がなくなります。

 日本は通信会社の主導で携帯電話網が発達したため、これまで生活者にとって公衆無線LANへのニーズは低いものでした。ただ海外では「Free Wi-Fi」と呼ぶ無料の公衆無線LANサービスが当たり前になり、来日した外国人観光客にとってFree Wi-Fiが未整備なことは大きなストレスでした。

 円安などを追い風に訪日する外国人観光客が、比較的小規模な観光地でも見かけることが珍しくなったことで、Free Wi-Fiが脚光を浴びるようになりました。経済問題というよりも人口問題で国内消費の伸びが期待できない中、外国人観光客の消費は地域経済にとって重要。Free Wi-Fiの整備によって彼らを呼び込もうというわけです。

 冒頭で紹介したように、外国人観光客だけではなく毎月使えるデータ量に制約がある格安SIMユーザーにとっても、制限なく使えるFree Wi-Fiは貴重で魅力的な環境となります。

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