慈善運動に関する投稿が、共感の輪を生むケースが増えている。なぜ生活者たちはこうしたニュースに飛びつき、人々に伝えようとするのか。その輪をうまく生かした生活者へのアプローチ「ソーシャルグッド」を考える。社会貢献とマーケティングの線引きが鍵を握っている。
昨年、北米で始まり日本でも多くのタレントや経営者たちが参加した「アイス・バケツ・チャレンジ」。ソーシャルメディアやマスメディアで大きなニュースとして取り上げられたので、覚えている方は多いでしょう。筋萎縮性側索硬化症(ALS)という難病の認知と研究を支援するためにFace bookやYouTubeなどで実施されたキャンペーンでした。
慈善運動のためにさまざまな人たちが参加していったこの現象。数年ほど前からマーケティング部門を中心に注目されてきた「ソーシャルグッド(Social Good)」と呼ぶソーシャルメディアへのアプローチの成功例といえるものでした。
一般にソーシャルグッドは、「社会を良くするコト」だとゆるやかな定義をされています。今回は、ソーシャルグッドについて取り上げます。
誤解されやすいCSRの意義
サスティナビリティー(持続可能性)は今、企業の経営層にとって重要なテーマです。将来にわたって利益を上げ、顧客へ商品・サービスを提供し続けるには、社会に受け入れられ続ける組織でなければなりません。そのためサスティナビリティーとCSR(企業の社会的責任)は切り離せません。
CSRというと、いまだに利益を排した慈善事業の側面だけをイメージする人が多いようです。CSRの本質は、顧客や社会に対して企業活動の説明責任を果たして容認してもらうことです。企業活動を理解してもらうコミュニケーションこそがCSRであり、結果として企業のサスティナビリティーが確かなものとなります。
自社の存在価値を理解してもらうコミュニケーションとは、世の中に送り出した商品・サービスのスペックを伝えていくことではありません。開発思想や製品などに込めたビジョンを伝えなければいけません。
その際、これを使えば御社のコスト効率が数十%向上する、といったセールストークをすればいいわけではありません。社会を良くしたいというビジョンを具現化したものが商品・サービスであるならば、その誕生に携わった企業はすでに何らかの形でソーシャルグッドを実現しているはずです。
YouTubeに投稿されている動画に「HAPPY福島」というものがあります。米国の歌手ファレル・ウィリアムス氏のヒット曲「HAPPY」の楽曲を使って、福島の人々が愉快に踊りながら地元を紹介していくというもの。同様のコンセプトの動画は、世界各地の人々によって自主的に作られ、合計で2000本近く投稿されました。