インターネットを母国語のように使うデジタルネイティブが社会に出てきます。私たち上の世代は、この世代に対して「異質感」を抱いてしまいがちです。その実態を理解することで、どんな価値観を持っているのか、どのような商品・サービスを開発すればよいかが見えてくるはずです。
デジタルネイティブという言葉を覚えているでしょうか。生まれた時からインターネットが存在し、ネットをまるで母国語(ネイティブ)のように使う世代を指す言葉です。日本では1990年半ば以降に生まれた、大学生くらいが第一世代に当たります。
デジタルネイティブは、ネットを自在に操り、これまでとは違う新たな価値観を持った世代として注目されました。6年前にNHKがこの言葉を使った番組を放映して話題となりました。当時は一部の特別な子どもたちだけだと思われていた事象は、今ではリアリティーのある現象として受け止められています。
新たな世代に、その上の世代が「異質感」を持つことはこれまでも繰り返されてきました。ただし時代ごとに異質感を生み出す要因は異なります。デジタルネイティブとノンネイティブの間にある大きな違いは、インターネットによって劇的に変化した情報化社会の存在と、ソーシャルメディアへの関わり方です。
デジタルネイティブを無視できない
デジタルネイティブの特徴としてよく挙げられるのが次の3点です。(1)ネット上での出会いも、リアルなものと同様に受け入れる、(2)相手の年齢や所属や肩書にこだわらない、(3)情報入手は無料と考える──。
デジタメネイティブという言葉の響きは、特別なグループを想起させます。そのイメージはフラットな世界観を持ち独自の価値観の中で成功を求めるといった、現在の若者全般に指摘される特徴と重なります。
ただし環境の変化に対応して才能を開花させる一部の天才、例えばソーシャルメディア時代の先端を走る米フェイスブックの創業者、マーク・ザッカーバーク氏を理解することは、イノベーションのヒントとなっても、ビジネス展開を考える際の汎用性はありません。私たちが理解すべきはザッカーバーク氏の能力ではなく、Facebookを構成する“ありふれたデジタルネイティブたち”の思考です。言い換えるなら、注目すべきなのはインターネットとともに生まれ、劇的な情報革命の中で育ってきた世代の一部ではなく全体です。
先のNHKの番組には、デジタルネイティブたちが社会に出てくる2018年までに、企業は彼ら彼女らに対応すべきというコメントがありました。それまでは残り3年です。北米などで取材した番組でしたので、日本とのタイムラグはあるとしても、決して先の話ではありません。
あなたの会社では、デジタルネイティブを受け入れるための企業のあり方やコミュニケーションについて、検討を進めているでしょうか。
検討すべきテーマは二つあります。一つは組織として彼ら彼女らをどう取り込むか、もう一つは顧客である彼ら彼女らをどうつかんでいくかです。
後者の「顧客としてのデジタルネイティブ」の扱いは、現時点で既に課題となっています。たとえBtoB事業だけに関わる企業でも、今の10代の思考と行動に、真剣に向き合う必要があります。
例を挙げると、10代のインターネット利用デバイスは圧倒的にスマートフォンです(図1)。スマートフォンでは、パソコンを使うインターネット上の行動把握で主流だった「Cookie」による識別が基本的にできません。データを解析しようにも「誰がいつ」という基本的な情報の識別が不可能なのです。
Cookieを前提としていたシステム設計では、少なくともデジタルネイティブのデータは空白となります。そのような欠陥があるシステムが許されることはなく、プロジェクトマネジャーなら代替の識別手法の開発をすぐに指示しなくてはなりません。