日常的にモバイルから様々な情報を得ている生活者が増えている現在、「モバイルファースト」という言葉が大きな意味を持つようになってきました。ソーシャルメディアと、生活者が持ち歩くモバイルが強く連携したことで、「新たな体験」を提供できるようになり、両者は爆発的に普及しました。
「モバイルファースト」という言葉が提唱されて4年ほどがたちました。今回は開発部門がモバイルを意識すべき理由と、モバイルとソーシャルメディアの今後について解説します。
モバイル使った情報収集は当たり前
顧客がモバイルで自社製品の情報を収集するという姿は、想像しづらいものです。筆者の経験でも、開発部門とマーケティングについて話をすると「うちはBtoBがメーンなのでスマートフォンなどでの情報発信は要りません」と断言されることがよくあります。
そうした考えに一石を投じるため、NTTアドが実施した調査結果を示しましょう。ITシステム導入選定に関わる国内のキーパーソンにアンケート調査をした結果、システム選定の情報収集にスマートフォンなどのモバイルを利用する人が多いことが分かりました(図1)。BYOD(個人所有デバイスの業務利用)が広がった影響からか、個人所有デバイスを業務に使う例も多く見られました。
アンケート結果と同様に、モバイルで日常的に業務上の情報を収集している人が少なくないと筆者は推測しています。会社のPCで業務をすることがメーンだとは思いますが、プライベートの時間に個人所有のスマートフォンから仕事をしてしまうことも少なくないはずです。
自分はそうしているのに、顧客はそうではないと決め付けてしまう矛盾のことを、社会心理学では“認知バイアス”と呼びます。企業向けのITシステムが、消費者が利用するITシステムよりも優れている、という認知バイアスも多くの人の意識に存在しています。生活者としては無償の個人向けサービスの便利さを体験し、自社システムの不便さを嘆いても、企業人として発言する際には産消逆転の事実を認めない場合が多いのではないでしょうか。
その矛盾は組織の規模や生活者との距離感に比例していると筆者は感じています。組織が大きく、エンドユーザーのニーズと向き合っていないところほど、モバイルやソーシャルメディアへの取り組みが遅れているようです。