ソーシャルメディアを利用する顧客の必要性や欲求を満たすには、消費者の会話の文脈や背景となる「コンテクスト」の理解が重要になっています。グーグルは従来のアルゴリズムからの脱却を目指し、コンテクストから会話を理解し、アドバイスしてくれる検索エンジンの開発を進めています。
今回はソーシャルメディアの活用に当たって最も重要な役割を果たすようになった「コンテクスト」(「文脈」、「背景」といった意味)について解説していきます。
開発者が顧客価値追求を阻害する
“マーケティングの神様”とよく評される米国の経営学者フィリップ・コトラー氏は次のように述べています。「企業は“作って売る”から“(ニーズを)感じ取って満たす”へ発想を転換しなければならない。顧客価値を広い視点で捉えなければならない。そして、顧客にとって最も便利なやり方でニーズを満たさなければならない。顧客が最小限の時間とエネルギーで製品・サービスを探し、注文し、受け取れるようにすべきなのだ」(『コトラー 新・マーケティング原論』、翔泳社刊)。これはソーシャル時代の今にも十分に当てはまる示唆です。
コトラー氏は顧客のニーズ(必要性)とウォンツ(欲求)を満たすことがマーケティングとしたうえで、ソーシャルメディアの普及によってその可能性は高まったものの、顧客価値に沿ったストーリーを作り出すことが難しいのは変わらないと指摘しています。
顧客価値に沿ったストーリー作成を難しくしているのは、顧客の代弁者となるべきマーケティング部門が、顧客を第一に考えられなくなっているからです。その理由の一つとして挙がっているのが、「開発者の思い入れ」です。
開発者は時として、自分たちの努力の成果が生活者の価値になると思い込み、機能の差異が絶対的なポイントだと主張してしまうことがあります。しかし生活者に、何物にも代えがたい機能を与えられるほどの製品は、世の中にそれほどはありません。
顧客のニーズとウォンツへのアプローチを心がけるマーケティングは古くからありました。ところが、ソーシャルメディアが普及する前と後でマーケティングは大きく変わりました。消費者(コンシューマー)が「生産消費者(プロコンシューマー)」へと変化していったからです。