企業が相次いでソーシャルメディアに乗り出す中で、システム部門など非マーケット部門の担当者も、ソーシャルメディアを意識せざるを得なくなりました。既にソーシャルを舞台に、イノベーションとマーケティングが結合する現象が起こっています。その好例として、シャープの「勇気あるつぶやき」を解説します。

 オーストリア出身の経済学者ヨーゼフ・シュンペーターは、「目新しいモノ・コトの組み合わせであるイノベーションは、売る仕組みとしてのマーケティングと対になることで事業機能として成立する」と述べています。

 生活者が「価値を認め、喜び、欲しくなり、サイフのひもを緩める」アイデアの実現がイノベーションです。そのアイデアを実現するにはマーケティングの知識が必要です。

 しかし現実には、専門性が高まるほどイノベーションを実現する情報システム部門はマーケティング部門と距離を置くようになってしまいました。そのような状態からは決してイノベーションは生まれないでしょう。効果のあるマーケティングも成立しません。

 イノベーションという言葉は、多くの場合“革新”や“発明”に置き換えられますが、経済成長を説いたシュンペーターはイノベーションを「新結合(newcombination)」を成すものと定義しています(図1)。つまり「今あるものの新しい結合」が、経済成長をもたらすイノベーションなのです。

図1 シュンペーターの「新結合(new combination)」
[画像のクリックで拡大表示]

生活者の行動欲求で変化する基盤

 生活者にとってソーシャルメディアは、イノベーションそのものです。親しい人との会話や、出会い、感動や怒りの共有といった普遍的な行動欲求を、インターネットとスマートフォンやパソコンを介すことで時間的・物理的制約を超えて享受できるコミュニケーションを提供してくれたからです。つまり、生活者の基本的なニーズをテクノロジーによって実現したものといえます。

 SNSを構成するテクノロジー自体は革新的なものではなく、既存技術の組み合わせでできたプラットフォームです。ただし生活者の行動欲求を基に変化を続けるプラットフォームであるところが、新結合(今あるものの新しい結合)としての価値を作り出しました。

 生活者の行動欲求を科学として解明するのがマーケティングです。だからこそ、SNS自体やSNS上の情報への取り組みを進めなければならい非マーケティング部門の人たちは、マーケティングの領域へ一歩足を踏み入れなくてはならないのです。

 例えば、現在多くの企業が対応を始めている「O2O」(Online to Offline)では、ビッグデータ解析のテクノロジーが施策を前進させるエンジンとなります。同時にビッグデータでは、情報量に加えその質が重要になります。

この先は日経クロステック Active会員の登録が必要です

日経クロステック Activeは、IT/製造/建設各分野にかかわる企業向け製品・サービスについて、選択や導入を支援する情報サイトです。製品・サービス情報、導入事例などのコンテンツを多数掲載しています。初めてご覧になる際には、会員登録(無料)をお願いいたします。