第1回から第3回まで、企業と顧客のそれぞれの視点から見たオムニチャネル・マーケティングの事例と、その中でのアナリティクスの活用について紹介し、オムニチャネルを実現するシステムの機能要件や機能構成要素を定義。さらに「オムニチャネル・マーケティング実現プラットフォーム」とはどのようなものかを解説してきました。今回は、連載の最終回として、オムニチャネル・マーケティングの実際の導入について、プロジェクトのアプローチや導入ステップなどを紹介します。

 オムニチャネル・マーケティング導入を検討する上で、最初に突き詰めて考えるべきことは、「なぜ、自社はオムニチャネルに取り組むのか?」ということです。銀行を例にとって、外部環境の変化をフックにした戦略立案の例をみてみましょう。

【銀行を取り巻く外部環境の変化】

  • 他業種の銀行業への参入(流通小売系、ネットバンクなど)によるさらなる競争の激化
  • 来店客数の減少と非対面チャネルへのアクセス増加(会えないお客様の増加)
  • 少子高齢化や人口減少、晩婚化、離婚増加によるライフステージパターンの多様化と、世帯資金ニーズの変化
  • 貯蓄から投資への流れ

 この環境変化を受け、銀行は以下のリテール戦略を打ち出すと推測できます。

【銀行のリテール戦略立案の例】

顧客リレーションシップの中心に営業店を位置付け、顧客ロイヤルティの醸成を営業店に依存する従来のモデルを改め、デジタルを含めた顧客接点の全チャネルを通じて、その銀行のブランド全体で顧客経験価値を最大化していく必要があるでしょう。

 これを踏まえ具体的には、以下のリテール戦略を掲げます。

  • 顧客接点の強化・改革(顧客接点の拡大と取引の深化)
  • 顧客一人ひとりのライフステージに沿った商品・サービスを、最適なタイミングで、最適なチャネルから提供

 このようなリテール戦略を立案した後に検討するべきことは、具体的な戦略目標やビジネスシナリオ、そして想定されるカスタマー・ジャーニーマップの立案でしょう。

 例えば、「競合金融機関と取引中の顧客に向けた乗り換え促進」という戦略目標を設定したとしましょう。まず自行の住宅ローンサイトを訪問した顧客のうちで毎月一定額を他行に入金している顧客を「対象顧客」と位置付け、DMもしくはテレマーケティングなどにより乗り換えをオファーしてみます。さらに、その際の反応に応じて、さらなる情報提供や相談会などの来店誘導をする、といったシナリオを描けるでしょう。このように戦略目標とそれに即したビジネスシナリオ、カスタマー・ジャーニーマップを定義していくことで、優先すべきチャネルやチャネル間で取るべき連携が明らかになっていきます。

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