2016年8月にリリースされたWindows 10の2回目の機能更新プログラム(機能アップグレード)である「Windows 10 Anniversary Update(バージョン1607)」には、「共有PC構成」という新機能が追加された。この新機能は、企業や学校における共有PCのセキュリティ確保と利便性の両方を実現する。

Windows 10 Anniversary Updateの新機能「共有PC構成」

 Windows 10 Anniversary Update、バージョン1607(以下、Windows 10バージョン1607)には、コンシューマーおよび企業向けのさまざまな新機能が追加されている。詳しくは以下のサイトでご確認いただきたいが、Webブラウザー「Microsoft Edge」の拡張機能、ペン向けの「Windows Inkワークスペース」、音声アシスタント「Cortana」の機能強化、「Windows Hello」の機能拡張、Xboxアプリへの対応、スマートフォンとの連携機能の拡張、ゲーム用の「Xboxアプリ」への対応、絵文字への対応強化、夜間や機内などの暗い環境に適した「ダークモードテーマ」の搭載といった、主にコンシューマー向けの新機能はIT系のメディアでたびたび取り上げられているので、ご存じの方もいるだろう。既にWindows 10 Anniversary Updateを導入して、いくつかの新機能を試した人もいるかもしれない。

Do great things. Windows 10の主要な機能 https://www.microsoft.com/ja-jp/windows/features

 一方で、Windows 10 Anniversary Updateにおける企業向け新機能とその利点については、あまりアピールされていないようだ。例えば、本連載の第11回で説明したWindows Information Protection、第13回で説明したWindows Update for Businessの機能の改善などである。第8回と第9回で説明したMicrosoft Passport for Workでは、PINや生体認証に加え、手持ちのスマートフォンを使用したサインイン(ロック解除)にも対応した。

 今回説明する「共有PC構成(Shared PC Configuration)」もまた、Windows 10バージョン1607のPro、Enterprise、およびEducationエディションで利用可能になった新機能である。共有PC構成は、複数のドメインユーザーまたは不特定多数のユーザーが1台のPCを共用する環境において、制限(ロックダウン)されたWindows 10の利用環境をメンテナンスフリーでユーザーに提供することを可能にする。

 オフィスで仕事をする従業員や、オフィスやモバイル環境で仕事をする営業担当者は、ひとり1台、あるいは複数台のPCやモバイルデバイスを利用できるのが一般的になっている。こうした人々は、専用のユーザーアカウント(ID)を使用して、社内のリソースやアプリケーションに適切な権限でアクセスできる。Windows 10ではID管理基盤として、従来のActive Directoryドメインと、本連載で何度も取り上げたクラウドベースのAzure Active Directory(Azure AD)を利用できる。

 一方で業務にPCをほとんど利用しない従業員は、現場やオフィスに設置されたPCを共用して、作業指示や作業報告のために業務アプリケーションやWindows環境を利用するケースがある。従業員であれば、これまでのWindows環境でもサインイン用のIDを準備して利用してもらうことができる。しかし、従業員以外のパートやアルバイトにもPCを使用してもらうためには、IDとパスワードの管理をどうするかが課題になるだろう。

 従業員以外にIDとパスワードによるサインインを認めるのは、セキュリティ面から適切ではない。こうしたIDに対して、権限に合ったアプリケーションの利用だけ許可する設定ができていなかったか、またはできなかった場合、悪意をもって利用を許可していないリソースやアプリケーションを利用されるリスクがあるからだ。

 このようなケースでは、Windows 10バージョン1607の共有PC構成が、最適なソリューションを提供できるかもしれない。

 共有PC構成のセットアップ方法は後回しにして、まずは共有PC構成でセットアップされたWindows 10バージョン1607がどのような利用イメージになるのか、一般的な企業のWindows環境と比較しながら見てみよう。

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