2016年8月初めにリリースされたWindows 10 Anniversary Update(バージョン1607)には、さまざまな新機能が追加されている。その中でも企業ユーザーにとって特に注目できるのが「Windows Information Protection(WIP)」だ。これまで「Enterprise Data Protection(EDP、エンタープライズデータ保護)」というコードネームで開発が進められてきた、企業向けの全く新しいセキュリティ機能である。

Windows 10バージョン1607に追加された新機能「Windows Information Protection」とは

 Windows Information Protectionは、2015年7月のWindows 10リリース時からWindows 10の新機能として紹介されていたが、初期リリースには含まれていなかった。2015年11月の機能アップグレードであるWindows 10バージョン1511に搭載されるとみられていたが見送られ、今回の2回目の機能アップグレードとなるWindows 10バージョン1607にようやく実装され、利用可能になった。この機能は、Windows 10バージョン1607を実行するWindows 10 Pro以上のエディションおよびWindows 10 Mobile(つまり、Windows 10 Home以外のすべて)でサポートされる。

 Windows Information Protectionは、企業が使用するアプリとデータをこれまでとは異なるアプローチで保護する。Windows 10デバイスを個人あるいは家族だけで利用するのであれば、この機能は何の役にも立たない。しかし、個人のWindows 10デバイスを仕事にも使うケース、あるいは企業がWindows 10デバイスを従業員に配布するというケースにおいて、Windows Information Protectionのセキュリティ機能は極めて有効である。企業がWindows 10を積極的に導入する起爆剤になるかもしれない。

 現在、企業内あるいはモバイル環境で従業員が使用するデバイスは多種多様で、1人の従業員が複数のデバイスを使用して業務を行うことは珍しくない。そのデバイスの中には、個人所有のものも含まれているかもしれない。個人所有のデバイスを業務に使うことに関しては、厳しく制限している企業も黙認している企業もあるはずだ。あるいは、企業のIT戦略として、個人所有のデバイスを業務にも利用する「BYOD(Bring Your Own Device:個人所有デバイスの業務利用)」を推し進めているところもあるだろう。

 BYODにおける最大の課題は、個人で利用する私的なアプリやサービスと、業務で利用するアプリやサービスの境界があいまいなことにある。その結果、個人が利用するアプリやサービス(SNSなど)を通じて、偶発的あるいは意図的にデータが漏洩するリスクが増大する。企業所有のデバイスを従業員に配布する場合も、デバイスで利用可能なアプリやサービスを制限しない限り、同じリスクがある。

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