「Windows Updateが強制的に実行される」「Windows Updateをユーザーが制御できない」など、Windows 10の更新機能に関する否定的な意見を見聞きすることがある。このような意見の一部は、Windows 10の更新機能が以前のバージョンのWindowsとさまざまな点で異なることを知らないために出てくるのかもしれない。今回は、Windows 10で新たに導入された、「更新ブランチ」などと呼ばれる企業向けのサービスオプションについて解説する。この機能を適切に利用することで、企業はWindowsの更新を原因とするトラブルの多くを回避することが可能だ。
「Windows as a Service」で提供されるWindows 10のサービスオプション
Windows 7までは、セキュリティ更新や重要な更新がWindows UpdateやWindows Server Update Services(WSUS)を通じて更新プログラムとして提供されてきた。そして、新機能や新しい規格への対応は、既にリリース済みの更新プログラムをまとめたサービスパック(Service Pack)に含まれる形で提供されてきた。
これに対してWindows 8以降では、新機能は大規模な更新プログラムやWindows 8.1に含まれる形で提供されてきた。ちなみに、マイクロソフトのサポートサービスでは、Windows 8.1はWindows 8のサービスパックという位置付けである。
Windows 10の更新は、Windows 8およびWindows 8.1のスタイルに近いものである。ただし、マイクロソフトは今後、新しい製品としてのWindowsの新バージョンを出す予定はない。Windows 10は、「Windows as a Service(サービスとしてのWindows)」というコンセプトに基づき、PCやデバイスに対して更新プログラムが継続的に提供され、常にセキュアな状態に保てるようにする。また新機能が、これまでよりも短いサイクルで提供される。
新機能の追加は、通常の更新プログラム(セキュリティ更新、不具合の修正、ドライバーの更新、Windows Defenderの定義の更新など)とは異なる、「機能アップグレード」と呼ぶ新しいバージョン(新しいビルド)へのアップグレードインストールで年に2~3回行われる(写真1)。2015年7月にWindows 10の初期リリース(ビルド10240、通称、Threshold 1、TH1)がリリースされてからこれまでに、機能アップグレードが1回提供されている。2015年11月にリリースされたバージョン1511(ビルド10586、通称はThreshold 2、TH2)である。2016年夏のWindows 10リリース1周年の時期には、Redstone 1(RS1)という通称を持つ機能アップグレードの提供が発表されている。
ここで、間違えないようにご認識いただきたいのは、「機能アップグレードはOSの新バージョンへのアップグレードインストールである」という点だ。企業におけるOSの新バージョンへの移行には、ハードウエアやアプリケーションの互換性のテストが重要である。このような短いサイクルでアップグレードされてしまうと、とてもではないが安定的にシステムを運用できないだろう。
そこでマイクロソフトは、企業向けに「更新ブランチ(Update Branch)」と呼ばれるサービスオプションを用意した。Windows 10には、表1に示すように「Current Branch(CB)」「Current Branch for Business(CBB)」「Long-Term Servicing Branch(LTSB)」の3つ更新ブランチが用意されている。Windows 10では、Enterprise LTSB※を除き、CBが既定の更新ブランチである。