前回は、Windows 10の無料アップグレード特典について、企業でも無料特典を利用できる場合があること、およびWindows 10の購入方法について説明した。今回は、企業のクライアントPCをWindows 10にアップグレードする前に知っておくべきWindows 10の重要な変更点、互換性の検証のポイントやその方法について説明する。

Windows 10は「最後のバージョン」にして「サービスである」、その意味は?

 Windows 10以前のWindowsは、数年に一度、新しいバージョンがリリースされてきた。企業はそのたびに、新しいバージョンにアップグレードするか、新しいPCにリプレースするか、あるいは現在のWindowsバージョンをそのまま継続して使用するかを選択してきた。予算などの都合で、バージョンをスキップして移行する企業もあるし、今まさにWindows 7をどうするべきか悩んでいる企業もあるはずだ。

 Windows 10を導入する前に、企業はWindows 10が「最後のWindowsバージョン」とも呼ばれ、「Windows as a Service(サービスとしてのWindows)」に変わることの意味を知る必要がある。Windows 10は、完成した固定的なバージョンではない。「サービス」という新しい提供形態に基づいて、新機能や新しい規格への対応が「機能アップデート(アップグレード)」として年に数回のペースで継続的に追加されていく。

 機能アップデートは無料であり(*1)、配布や展開方法が簡素化されるという違いはあるが、従来のWindowsにおける新バージョン(新しいビルド)へのアップグレードと同等である。Windows 10の最初のバージョン(ビルド10240)は2015年7月にリリースされ、同年11月には最初の機能アップデートである「Windows 10バージョン1511(ビルド10586)」が提供されている。

*1 Windows 10 Enterpriseに対する機能アップデートは、有効なWindowsソフトウェアアシュアランスまたはWindows Virtual Desktop Access(VDA)ライセンスを持つ場合にのみ利用できる

 つまり、Windows 10をいったん導入すると、企業はこれまで以上に短いサイクルでアップグレードを繰り返す必要が生じることを、導入前に承知しておかなければならない。企業利用においてはアップグレードのサイクルをある程度延長できるが、アップグレードを見送るという選択肢は基本的に存在しない(*2)。

*2 Windows as a Serviceの対象外となる「Long Term Servicing Branch(LTSB)」を利用する方法もあるが、それについては別の機会に説明する

どのバージョンのWindows 10からスタートするか

 Windows 10 Homeを利用する個人ユーザーは、常に最新バージョン(ビルド)のWindows 10を利用するしか選択肢がない。最新バージョンは新機能をいち早く利用できるという利点がある一方で、未修正の不具合が原因で安定性に不安があるという側面もある。一方、Windows 10 ProやEnterpriseを利用する企業ユーザーは、使用できる期間に制限はあるものの、不具合が修正され安定度が増した1つまたは2つ古いバージョン(ビルド)をクライアントPCに導入できる。

 Windows as a Serviceについては別の機会に改めて説明するが、今回はWindows 10の導入時にどのバージョンのWindows 10を導入するか、言い換えればWindows as a ServiceをどのバージョンのWindows 10からスタートするかという点について触れておきたい。

 Windows 10の無料アップグレード特典を利用する個人および企業ユーザーは、その時点で提供されている最新バージョンのWindows 10にアップグレードすることになる。一方、無料アップグレード特典を利用しない企業ユーザー(具体的には、Windows 10 Enterpriseを導入する企業、または無料アップグレード期間後にWindows 10を購入して導入する企業)は、古いバージョンから導入することも可能だ。本稿執筆時点(2016年3月中旬)時点の最新バージョンは、Windows 10バージョン1511(ビルド10586)である。企業ユーザーはこのバージョンへのアップグレードも、初期リリースであるWindows 10(ビルド10240)へのアップグレードも可能である。では、現時点で無料アップグレード特典を使わないユーザーは、どちらのバージョンを導入するべきなのだろうか。

 これからWindows 10を導入するのであれば、Windows 10バージョン1511(ビルド10586)以降のバージョンからスタートするのがベストである。なぜなら、企業がWindows as a Serviceのアップグレードサイクルを詳細に制御できる「Windows Update for Business」の機能が実装されたのは、Windows 10バージョン1511(ビルド10586)からだからだ。企業向けのWindows 10は、事実上、Windows 10バージョン1511(ビルド10586)のリリースから始まったと言ってよい。

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