2015年1月26日に開催された「ITインフラSummit 2015」。ITインフラの先進ユーザー、ITインフラの構築、運用に携わるソリューションベンダーが一堂に会し、ITインフラ構築・運用の取り組みや、課題の解決に向けた最新の技術やソリューションに関する18のセミナーを開催した。

 本稿では、このなかから、ネットワーク基盤の構築、運用に関わる2講演の内容を報告する。IDC Japanが、ビジネスに貢献するネットワークの要件について、リバーベッドテクノロジーは、アプリケーション、特にSaaSの性能劣化を防ぐためのアプローチを具体的に解説する。

 

特別講演:IDC Japan
ビジネスに貢献する企業ネットワークを牽引、SDNと無線LAN

 ITインフラSummit 2015のソリューション講演「C-2」トラックでは、市場調査会社のIDC Japanから草野賢一氏が登壇。同社が実施した調査結果をもとに、無線LANとSDN(ソフトウエアデファインドネットワーク)を中心とした企業ネットワークの動向を解説した。

 草野氏はまず、ITに求められる役割の変化を指摘した。LOB(業務部門)主導のIT投資が増え、IT部門の役割は、より戦略的なものにシフトしているという。こうした中、新たなプラットフォーム(ビッグデータ、クラウド、ソーシャル、モバイル)が登場し、IT基盤はソフトウエアデファインド型へと移っている。

IDC Japan コミュニケーションズ グループマネージャー 草野 賢一 氏
IDC Japan コミュニケーションズ グループマネージャー 草野 賢一 氏

 特に、ビジネスの牽引役として、SDNと無線LANを中心とした企業ネットワークが重要になっているという。求められるネットワークの姿は、クラウドやモバイルの利用が中心で、アジリティ(迅速性)やエラスティシティ(変化に適応する弾力性)を備えたものだ。

 一方で、現場のネットワーク管理者の課題意識は以前と変わっていないという。つまり、配線の複雑化や老朽化、ルーターの故障といった物理的な課題および、無線LANの電波状態といった見えない課題である。こうした「課題」の存在は承知しているが、そのうえで「求められるもの」を実現するために有効なのが、SDNと無線LAN技術だとした。

有効な場面にはすかさずSDNを活用しよう

 SDNの認知度は、2013年時点の調査に比べ上がっているという。従業員1000人以上の大企業においては、導入が内定しているまたは導入済み、と答えた企業が全体の半数以上を占めた。

 調査から見えるSDNの主なメリットは、論理ネットワークを迅速に構築できること、ネットワークを集中管理できること、ネットワーク資源を効率的に利用できること、の3つである。調査では、回答者の65%が「ネットワーク機器を一元管理できること」を、SDNのメリットとして挙げている。

 これらのほかにも、SDNが有効なケースはあると草野氏は指摘する。例えば、開発環境や研究用ネットワークなど、一時的に使うネットワークを素早く用意し、使い終わったらリソースを開放する、という用途である。また、ネットワークの可視化や、コアスイッチのダウンサイジング、フロー制御のセキュリティへの活用、などにもSDNが威力を発揮する。

 一方、実際に企業がSDNを導入する際に足かせとなる要素もある。特に、SDNの定義が曖昧なこと、ユースケースが分かりにくいこと、導入効果が多面的で捉えにくいこと、などである。だが、多面性を逆手にとり、好ましい適用先に限ってSDNを適用するというスタンスが有効なのではないか、と草野氏は説いた。

企業の無線LANでも11acが本格普及

 企業の無線LANでは、2015年にIEEE 802.11ac規格が本格的に浸透するという。コンシューマ(一般消費者)分野ではすでにIEEE 802.11ac規格は一般的だが、企業向け製品はコンシューマ向け製品からおよそ1年半ほど遅れる傾向にあり、企業ではこれからIEEE 802.11ac規格の普及が進む。これにより、5GHz帯はより重要になる。

 実際、企業における無線LAN利用は広まっている。同社の調査によれば、社員全員が無線LANを使っている企業が21.3%、過半数の社員が無線LANを使っている企業が27.0%であり、これらを合わせると全体の半数近くが無線LANを積極的に活用していると言える。また、全体の72.1%の企業が、無線LANの導入が有線LANの利用に影響を与えたと回答している。

 無線LANには注意点もあると草野氏は指摘する。例えば、新規格の導入によって無線LANのスループットが向上すると、バックボーンとなる有線LANの再構築なども場合によっては必要になる。また、セキュリティの確保にも常に関心を抱いていなければならない。

 講演のまとめとして草野氏は、ビジネスを牽引するネットワークに必要な技術がSDNと無線LANであることを改めて指摘した。SDNは、有効な場面を選んで適応することで、ネットワークに迅速性と柔軟性を持たせられるという。一方の無線LANは、上手に使えばネットワーク利用形態の自由度が高まる。

この先は日経クロステック Active会員の登録が必要です

日経クロステック Activeは、IT/製造/建設各分野にかかわる企業向け製品・サービスについて、選択や導入を支援する情報サイトです。製品・サービス情報、導入事例などのコンテンツを多数掲載しています。初めてご覧になる際には、会員登録(無料)をお願いいたします。

この記事に関連する資料