本連載の最終回となる今回は、さくらインターネットが2011年11月に北海道石狩市で稼働させた郊外型の石狩データセンターと、NTTコミュニケーションズが2013年4月に東京都北区で稼働させた都市型の東京第6データセンターに迫る。前者は外気冷却システムの導入で2013年の平均PUE(電力利用効率)で1.2を達成した他、一部の商用サーバーに直流給電対応品を導入して消費電力を減らす試みを進めた大型データセンターだ。また後者は都内の立地ながら外気を冷却に活用しPUE 1.2の実現を目指す都市型データセンターである。

立地を問わないサービスの基盤に

 都市型データセンターでのサービス提供を売りにしていたさくらインターネットが郊外型データセンターの開設を本格的に検討し始めたのは2009年のことだった。ハードウエアを預かって運用するハウジングサービスは顧客がデータセンターを訪れることも多いため顧客企業からの物理的な近さが重要になる。しかし、サーバーの貸し出しなど顧客がデータセンターに来ない、立地を問わないサービスも増えてきたことから、2010年春に石狩データセンターの設置を決定。2011年11月に稼働させた(写真1)。現在は専用サーバー、仮想専用サーバー、IaaS型クラウドサービス、リモートハウジング(コロケーション)サービスの基盤として石狩データセンターを活用している。

写真1●さくらインターネットの石狩データセンターの外観(写真:さくらインターネット)
写真1●さくらインターネットの石狩データセンターの外観(写真:さくらインターネット)
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 さくらインターネットは、石狩データセンターの5万平方メートル超の敷地に1号棟と2号棟を同時に完成させた。2棟の延床面積は合計約1万1400平方メートル。標準供給電力が8kVAのラックを1棟当たり500ラック設置しており、同センターは最大8棟、4000ラックまで拡張可能だ。

 石狩データセンターは低温の外気とサーバーからの排気を混合してサーバー室に送り込む直接型の外気冷却システムを採用した。建屋の軒下に設けた採り入れ口から外気を吸い込み、ホコリを取り除くフィルターと塩分を取り除くフィルターを通過させる。塩分除去フィルターを通すのは、石狩市が海に近いからだ(写真2)。その後、適切な温度と湿度になるようにサーバー室の排気の環気と混合し、加湿して室内に送り込む。外気の採り入れ口を軒下に置き、しかも環気と混合する場所まで何度も曲がるように流路を設定したのは、たとえ吹雪が発生したときでもサーバー室に悪影響を与えないようにするためという。

写真2●外気の採り入れ口に置いた除塩用のフィルター。ホコリを除去するフィルターと、塩分を除去するフィルターを通した上で外気を入れる(写真:さくらインターネット)
写真2●外気の採り入れ口に置いた除塩用のフィルター。ホコリを除去するフィルターと、塩分を除去するフィルターを通した上で外気を入れる(写真:さくらインターネット)
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