BCP対策のためにクラウドへのバックアップを検討すると、機密性が高いデータの扱いが課題になりやすい。一般的には、オンプレミス側でファイル自体を暗号化してから、パブリッククラウドに伝送して対処する。ただし、この方法では社内のセキュリティ規定を満たせないケースがある。

 例えば製造業の研究開発部門では、暗号化するだけでは機密性の高いデータを社外に出せないと規定していることが少なくない。もっとも、BCPの観点に立てば、機密性の高いデータを管理する拠点が被災し、消失するリスクを防ぐ必要もある。

 こうした、特に機密性の高いデータを外部にバックアップする手段として、秘密分散法とパブリッククラウドを組み合わせたサービスが増えてきた。

 秘密分散法は、データを無意味な複数のデータに断片化する技術である。断片化したデータの一つひとつには意味が無いため、仮に外部の第三者に漏洩しても問題にならずに済む。

 秘密分散法の技術自体と関連製品は以前から存在する。ただ、自前で製品を導入するとなると、相応のコストと運用の負荷がかかる。そこで秘密分散の機能を備えたサーバーや、バックアップ先のパブリッククラウドの運用を一体提供するITベンダーのサービスが増えているわけだ。

複数のクラウドに分散して保存

 パナソニック ソリューションテクノロジーの「秘密分散型クラウドバックアップサービス」の標準的なタイプを例に取ると、秘密分散を実行するバックアップサーバーと、3社のパブリッククラウドのストレージでシステムを構成する。バックアップサーバーの指定フォルダーに対象データをCIFSで伝送すると、サーバーが秘密分散法でファイルを自動的に断片化する。断片化したそれぞれのファイルを、異なるパブリッククラウドのストレージサービスに分散して保存する(図7)。同サービスでは、最大で7カ所の分散に対応している。

図7●秘密分散法で複数クラウドに分割バックアップ
図7●秘密分散法で複数クラウドに分割バックアップ
ファイルを断片化し、それぞれを別のクラウドに分割してバックアップすることにより、機密性の高いファイルがクラウド経由で漏洩するリスクを排除する
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 断片化したそれぞれのファイルには、一定数そろうことで元のデータに戻せるようにするための情報が埋め込んである。「あるクラウドのストレージで誤ってファイルを消失するような事故が発生しても、他の二つのクラウドにあるファイルを利用して復元できる」(パナソニック ソリューションテクノロジー ソリューション推進部 ソリューション三課 課長 淵田欽也氏)。

 クラウドストレージを活用しながら、十分な機密性と堅牢性を確保した仕組みといえる。機密性の特に高いファイルであっても、パブリッククラウドのストレージを活用する恩恵が得られるわけだ。

 ただし、割り切りが必要な点もある。クラウドからデータをリカバリーする必要が生じた場合、その作業はITベンダーに任せざるを得ない。一般的なクラウドバックアップでのリカバリー以上に、時間が掛かる恐れがある。パナソニック ソリューションテクノロジーの淵田氏は「短時間での復旧よりも確実なデータ保護に対する優先順位が高いユーザー企業に向く」と話す。実際のユーザーも、製造業の開発・設計データや知的財産権にかかわるデータなどに絞って利用することが多いという。

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