アンケート調査では利用率57%と、クラウドで独走状態にあるAWS。マイクロソフトやグーグルなどライバル各社の追い上げが熱を帯びてきた。サービス追加や値下げ、パートナー制度の拡充など施策は様々。クラウドベンダーの最新戦略をひも解く。

 AWSの独走ぶりを再確認する。2万社以上が利用(2013年時点)と、日本でも実績は圧倒的。強みは、先端サービスを起点に、パートナー制度とユーザーコミュニティーのエコシステムを確立していることにある(図12)。

図12 AWSが形成するエコシステム
図12 AWSが形成するエコシステム
パートナー、ユーザーを巻き込み成長へ
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 AWSは、新たなサービスや機能を途切れなく投入する。「2014年だけで516個の機能拡張や改善を実施、2015年も5月末時点で275個とこれを上回る勢いだ」(アマゾン データサービス ジャパン ストラテジックソリューション部 部長 大谷晋平氏)。IaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)から出発したAWSは、ミドルウエアを拡充しPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)でも先頭を走る。

 MySQL互換のリレーショナルデータベース「Amazon RDS for Aurora」、API管理「Amazon API Gateway」、イベント駆動型アプリに向けた「AWS Lambda」、機械学習サービス「Amazon Machine Learning」。今年発表した主なものだけを見ても、これだけの新たなサービスを繰り出している。

 ただユーザーにとって、新サービスは評価が難しいし、AWS上のシステム構築ノウハウも乏しい。そこでSIやISVといったパートナーの出番だ。

 AWSでは「APNパートナープログラム」を用意。営業・技術支援やセミナー支援、トレーニングの割引などを通じて、パートナーの底上げを図っている。

 SI向けの「コンサルティングパートナー」には「スタンダード」に89社、「アドバンスト」に27社が名を連ねる。最上位の「プレミア」は国内で4社のみ。マーケティング本部長の小島英揮氏は、「ユーザー事例や、認定資格を取っている社員数など、上位パートナーへの認定基準はかなり厳しい」と話す。

 「JAWS-UG(Japan AWS User Group)、通称JAWS」と呼ぶユーザーコミュニティーも、AWSの普及を後押しする。現在、全国に50以上の支部を置く。「参加者の地域やスキルレベル、テーマなどに応じて細分化してきたことが最近の特徴」(小島氏)。「初心者支部」や「IoT専門支部」、企業のCIO(最高情報責任者)が中心に参加する「Enterprise JAWS UG」など、活動は広がっている。

 オンプレミス環境を持たないAWSは、「最終的に、あらゆるユーザーのあらゆるワークロードを乗せられるように機能を強化している」(大谷氏)。ただし、ロードマップはユーザーに開示しない。大谷氏は「全ユーザーのフィードバックに基づいて、優先度を変えながら新サービスを開発しているため」と説明する。

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