コスト削減だけではなく、ビッグデータ分析やIoT(Internet of Things)など、ビジネスの競争力強化につながるアプリ開発にクラウドを活用する企業が増えた。データ収集・分析や機械学習関連のPaaSの登場が、この動きを後押ししている。IaaS上で開発したシステムをPaaSを使って刷新する企業もある。
今回のアンケート調査と2年前の同様調査との比較で、「パブリッククラウドを適用するシステムの条件」という設問に対し、最も高い伸びを示したのが「競争力強化につながる成長分野のシステム」だ。
ビッグデータ分析やIoTといった分野で、クラウドならではの利点を生かし、ビジネスの競争力を高めようとする動きが活発化している。ビッグデータ分析やIoT、機械学習関連のPaaSが次々登場し誰もが手軽に取り組めるようになった。
バーコード機器大手のサトーホールディングスは2015年8月に、IoTによる保守サービス「サトーオンラインサービス(SOS)」に対応したラベルプリンターを発売した(図4)。
プリンターの稼働状況をクラウド上に収集し、24時間365日遠隔監視する。稼働状況からラベル交換時期や問題が起きそうな箇所を事前に把握して、必要なサポートを実施する。
PaaSとSaaSでデータを連携
SOSを支えるシステム基盤はセールスフォース・ドットコムのPaaSである「Heroku」と、営業支援SaaSの「Service Cloud」で構成している。プリンターに搭載したセンサーから情報を収集する仕組みはHerokuで構築した。HerokuはIoTやモバイル向けのWebアプリ開発に向くとされるPaaSだ。
サトーホールディングスがSOSの開発検討に着手したのは2014年4月のこと。グループの販売事業会社であるサトー カスタマーサポートユニット長の長尾博史氏は、「IoTで実績のあるPaaSを探すうちに、Herokuを知った」という。
海外ではHerokuを使ってセンサー情報をクラウド上に収集したり、IoT機器の遠隔操作の仕組みを構築したりしている事例がある。長尾氏は「ノウハウを持ったベンダーがいたことも決め手だった」と語る。
IoTアプリで収集したプリンターの稼働状況を、Service Cloud上の顧客データと統合したかったのもHerokuの採用理由だ。IoTアプリによる収集データは、「Salesforce1 Heroku Connect」という機能を使ってService Cloud内の顧客データと統合する。これにより「エラー内容を次の商品開発につなげたり、CRM(顧客関係管理)の強化に活用したりできる」(長尾氏)という。