本連載では、“IT担当者”が担うべき仕事を基礎的な内容から分かりやすく解説していきます。少人数でIT機器・サービス全般を見ていたり、情報システム部門と他部門を兼務していたり、ITインフラを構築あるいは運用するノウハウを十分お持ちでない方の参考として、また、「自分は運用に必要な知識は一通り持っている」という方の“仕事内容のおさらい”として使っていただければと思います。
企業は、オフィスを移転したり新設したりすることがあります。その場合、移転先または新設したオフィスに新たにネットワークを構築する必要があります。そのとき、IT担当者にはどのような検討や準備をする必要があるのでしょうか?
ケーブルを這わせる場所に注意
新たに入居するビルは、ITが考慮されている方が何かと便利です。IT担当者が移転先選びに関与できる場合は、入居先の選定ポイントとして、以下のポイントを確認しておいたほうがいいでしょう。
建物はネットワーク配線がしやすい構造になっていることが理想です。極端に古くない建物であれば、フロアの床がタイル状になっており一部を外せる「フリーアクセス」と呼ばれる作りになっています。タイルをはずして床下にLANケーブルを這わせ、任意の場所から床上に出せるのです。
古い建物でフリーアクセスになっていないと、LANスイッチからパソコン、あるいは島ハブまで床面にずっとLANケーブルを這わせなくてはいけません。これは見た目がよくないということもありますが、よく踏まれる場所にケーブルを這わせると、上からの圧力で断線しやすくなるというリスクがあります。こうした場所では覆い(モール)でケーブルを保護するなどの対処が必要です。
新しい建物の中には、天井が「システム天井」という作りになっている場合があります。基本はフリーアクセスのフロアと一緒で、天井裏に自由にケーブルを通せます。システム天井は、無線LANのアクセスポイント(AP)を取り付ける際に便利です。APは電波を届きやすくするために壁面の天井近くに取り付けるのが基本です。そこでPoEスイッチから天井裏を介してケーブルを這わせ、APの近くから下すようにします。
オフィスが自社ビルか、テナントで入居するのかでも違いは出てきます。テナントで入居する場合は、ビルに管理部門や管理会社がいますので、配線や壁に穴を開けるといったことが発生すると、その都度、申請しなくてはなりません。申請時には退去時の回復方法について聞かれると思いますので、その点も考えておく必要があります。
また、申請を出してから許可されるまでの時間をスケジュールに盛り込んで(許可が下りなかったときの代替策も考えて)、計画を進めなくてはなりません。
無線LANは「置いて完了」ではない
入居するビルに無線LAN環境を構築する場合は、ネットワークの設計に入る前にサイトサーベイという電波測定作業を実施する必要があります。サイトサーベイにはさまざまな手法がありますが、当社の場合は試験的にAPを持ち込み、電波が最も届きにくそうな場所に置いて電波強度を測ります。その結果から、APをどのあたりに何台設置すればよいかを検討します。