本連載では、“IT担当者”が担うべき仕事を基礎的な内容から分かりやすく解説していきます。少人数でIT機器・サービス全般を見ていたり、情報システム部門と他部門を兼務していたり、ITインフラを構築あるいは運用するノウハウを十分お持ちでない方の参考として、また、「自分は運用に必要な知識は一通り持っている」という方の“仕事内容のおさらい”として使っていただければと思います。
前回はクラウドサービスの全体像を見てきました。今回はまず、クラウドサービスに向く用途を考えてみましょう。
新規事業にはパブリッククラウドがベストマッチ
中小企業は、少ないコストでリスクを減らし、売り上げを拡大することが重要です。この観点から、クラウドサービスの利用目的は以下に説明する3点に絞られます。
1つめはコスト削減です。今あるシステムをクラウドサービスに移すことによって、既設のハードウエア/ソフトウエアの購入・開発・保守費用を削減するというものです。クラウドでコストを削減するという話は、よく出てきます。
2つめは業務効率化や生産性向上です。例えば、どこからでも利用できる利点を生かして、作業が可能な場所を拡大し作業時間を短縮するとか、支店やパートナーとの情報共有を加速させるといったことが可能になります。
3つめは新規事業の立ち上げや新規顧客の獲得です。これはパブリッククラウドに非常に向いていると思います。これからの新規事業には、必ずといってよいほどITが関係してきます。こうした新しい事業は早く立ち上げることが重要ですし、投資リスクを考えなくてはなりません。クラウドサービスは低コストですぐに利用開始できるため、アイデアを迅速に実行に移せます。また事業の成長に合わせて、システムの拡張などにも対応できます。残念ながら事業がうまくいかなかったら、クラウドサービスを解約すればよいのです。利益が出て投資ができるようになったら、プライベートクラウドへの移行を検討してもよいでしょう。