本連載では、“IT担当者”が担うべき仕事を基礎的な内容から分かりやすく解説していきます。少人数でIT機器・サービス全般を見ていたり、情報システム部門と他部門を兼務していたり、ITインフラを構築あるいは運用するノウハウを十分お持ちでない方の参考として、また、「自分は運用に必要な知識は一通り持っている」という方の“仕事内容のおさらい”として使っていただければと思います。
ITインフラを担当していると、製品を新たに購入したり買い替えたりする機会が多いと思います。そこで今回は、IT製品を選択するときのポイントをお話しします。
事例を見て自社に適合するかを判断
検討している製品を初めて購入する場合は、価格や機能、用途が、自社に適合するかどうか判断できないことがあります。そのようなときは、導入事例を探してみましょう。従業員規模や拠点数などが自社と似た企業が導入していれば参考になりますし、その製品が適合していることが分かります。
主にメーカーや販社などが、Webサイトやカタログで導入事例を公開している場合が多く、当社も検討の参考にしてもらう目的で導入事例をWebサイトに掲載しています。
Webサイトを見て熱意をはかる
選択肢に入れる製品を探したら、メーカーや販社などのWebサイトをよく見るというのもポイントです。検討している製品にどれだけ力を入れているかを読み取れるからです。「解説が充実していて分かりやすい」「懇切丁寧に書いてある」「価格体系も分かりやすく表示している」といった場合であれば、必要な情報をきちんと伝えてくれそうだと推測できます。「事例が多数掲載されている」だと、実績が多くノウハウが蓄積されているかもしれません。「何となくやる気がなさそう」といったことも、結構分かるものです。販社から出される提案書や見積書にも、同様のことが言えると思います。
少し敷居が高くなりますが、判断のために不足している情報があったら、メーカーや販社などのWebサイトにある問い合わせフォームを使う方法があります。ここに自分の連絡先を入力して、カタログを送ってもらったり価格を聞いたりすることができます。
あちこちから仕入れると後が大変になることも
安価に製品を購入することを重視する場合、複数の販社から購入することを考えるかもしれません。ただし複数のシステムインテグレーターなどからIT製品を購入し、構築や運用も任せる場合は、注意が必要です。構築や運用に複数社が携わっていることが原因で、トラブルや問い合わせへの対応が難しくなる場合があるためです。
設定、設計、運用のいずれにおいても、システムインテグレーターなどの業者は他社が担当した部分については責任範囲外であり分からないことも多いため、作業をすることができません。「トラブルの状況から問い合わせるべき業者を判断し、作業を依頼できる」といった外部委託業者のコントロールができるのであれば別ですが、そうでなければできるだけ1社に絞った方が無難かもしれません。
トラブルを避けるためにも、また導入コストを正しく把握できるようにするためにも、導入に伴って必要になる作業やシステムインテグレーターに任せる範囲を明確にすることが重要です。販社に予算を伝えて相談するとよいでしょう。作業範囲が明確になり、トラブルを減らせると思います。
具体例として、UTM（Unified Threat Management）を購入するケースで考えてみましょう。設定項目が多く、設計を伴うこともありますので、購入するだけということはあまりないでしょう。設定や設計の作業内容は多種多様です。シンプルなものだと、SEが1日だけ企業を訪問して、IT担当者と話をして設定を決め、その設定を記載した「パラメーターシート」をIT担当者に渡して終わりというケースがあります。その一方で、コンサルテーションを行ってネットワークを再設計し、それに沿ってUTMを設定し設置するところまで担当するケースもあります。
どのような作業を依頼するにしても、成果物を作成してもらうことが大切です。これもトラブル防止に役立ちます。先ほどの設定を記載したパラメーターシートもそうですし、ネットワークを設計した場合の構成図や社員の端末に割り当てたIPアドレスの一覧表なども該当します。こうした情報がないと、IT担当者が異動などで変わったときに、引き継ぎが大変になってしまいます。当社はこれらの成果物を「作業結果報告書」と呼んでおり、見積りに入れて提案するようにしています。