2014年5月、国産ベンダーが相次ぎSDNに関する発表を行った。OpenFlow規格の製品をいち早く投入したNECはソリューションを強化。富士通、日立製作所は他社との協業戦略を打ち出す。グローバルに目を転じれば、標準化の動きが活発化し、国産ベンダーへの影響は必至だ。国産SDNベンダーの最新動向を追った。

 国産ベンダーが、ソフトウエアでネットワークを制御するSDN(ソフトウエア・デファインド・ネットワーキング)の新製品を相次ぎ発表した()。富士通は広域ネットワーク向けのSDN製品「Virtuora」の販売や、クラウドOS「OpenStack」に関するSDNベンチャー企業ミドクラとの提携を発表。日立グループは、ネットワーク機器を開発する日立金属が、NTTデータとのSDN事業での協業を発表した。NECはSDNを活用したDR(ディザスタリカバリー)ソリューションを発表するなど、国産ベンダーの動きが活発になってきた。

表●商用SDN製品を提供する国産ベンダー、海外ベンダーの例
国産ベンダーも、一通りのSDN製品が出揃った
表●商用SDN製品を提供する国産ベンダー、海外ベンダーの例
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 SDNは、SDNコントローラーから様々なプロトコルを使って物理スイッチや仮想スイッチを一元的に管理したり、IaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)を構築するクラウドOSと連携することで、ユーザーが従来よりも簡単にネットワークを制御できるようにすることを目指す(図1)。

図1●SDN環境におけるクラウドOS、SDNコントローラー、スイッチの関係
図1●SDN環境におけるクラウドOS、SDNコントローラー、スイッチの関係
SDNコントローラーから様々な種類のスイッチを操作
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 また、従来は物理スイッチのみで行っていたネットワークの論理分割を、SDNコントローラーから仮想スイッチを操作して構成する仮想ネットワークで実現できる。

 IDCジャパンの予測によれば、国内におけるデータセンター向けSDN市場は2014年に本格化し、2017年には市場規模が342億3400万円に達する。こうした市場拡大に乗り遅れまいと、ここにきて本気を見せる、国産ベンダー3社の最新動向を見ていこう。

富士通は協業路線、3領域に製品

 富士通は「他社との協業」路線を進める。ミドクラとの提携を始め、SDNコントローラー「ServerView Resource Orchestrator」は、シスコシステムズやブロケードのスイッチをサポート。今後、ヴイエムウェアのネットワーク仮想化技術「VMware NSX」をサポートする予定である。富士通 ネットワークサービス事業本部 先進テクノロジー戦略室 室長 プリンシパルアーキテクトの天満尚二氏は、「SDNは様々な製品があり、どのような規格や技術が標準になるかまだ分からない。様々なベンダーと協業して主流となる技術を見極めつつ、自社に必要なものから取り込んでいきたい」と、同社の戦略を語る。

 富士通の戦略でもう一つ特徴的な点は、SDNのアーキテクチャーをデータセンター、広域ネットワーク、スマートデバイスの三つの領域に分け、領域ごとに製品を用意することだ。こうした使い分けに関し富士通 ネットワークビジネス戦略室 技師長 兼 事業企画室長 兼 SDN推進室長の竹田聡氏は、「各領域でネットワークに求められる特性が異なるため」と説明する。

 昨年から提供するデータセンター向けは、イーサーネットファブリック上に、「VFAB」といったオーバーレイ方式の仮想ネットワークを構築する製品群を用意。ネットワーク自体の変更よりも、サーバーやストレージと合わせたシステム全体の柔軟性を確保することに主眼を置く。

 一方、2014年5月に発表した広域ネットワーク向けは、OpenFlowに基づいた集中管理型ネットワークや、自律分散型のネットワークも管理できる製品群を用意する。社外のネットワークに代表されるように、「どのルートを通るか把握できないネットワーク」まで制御する必要があるからだ。

 1年後をめどに、スマートデバイス環境に適したSDN製品群の第3弾を発表する予定で、「全ての製品が揃えば、データセンター、広域ネットワーク、デバイスを含めたエンド・ツー・エンドで統合的にネットワークの品質を管理できる」(竹田氏)という。

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