前回の記事では、これまで通りの変化のない企業Webサイトでは見込み顧客の育成・獲得を実現することが難しく、その実現のためにはオウンドメディアとしてユーザに寄り添ったコンテンツを提供していくことで良質なWeb体験を提供していくことが重要であると述べました。

 BtoB企業がオウンドメディアに取り組むメリットとデメリットについて説明したいと思います。

企業がオウンドメディアに取り組むメリット

 まず、BtoB企業がオウンドメディアに取り組むことで得られる様々なメリットを説明していきます。大きく3つあります。1つは検索時に見つけられやすくなること、2つ目は意志決定の促進、3つ目はマーケティング資産になるです。

 それぞれについて説明します。

検索時にWebサイトを見つけてもらいやすくなる

 一般的な企業Webサイトは、企業名・商品名程度しかSEO(検索エンジン最適化)対策がされていません。なぜなら、Webサイトのコンテンツはほとんどが製品カタログ、ニュースリリース、企業情報、採用情報などで占められている半面、「生産業務の効率化」といった課題や、「ロボット先端技術の今」といったテーマを訴求するコンテンツが少ないためです。

 実際にアクセス解析で見ると、自社名や商品名以外の、よく検索に使われるキーワード(ビッグワードなどと呼ばれる)を通じてWebサイトに流入してきている来訪者は非常に少ないのではないでしょうか。オウンドメディアでは商品ページでは説明しきれなかった課題やテーマなどの周辺情報に関するコンテンツを柔軟に複数展開できます。これによりSEO効果を高め、課題・テーマからの流入を増加させることができます。実際、あるクライアント企業では自社サイト外にオウンドメディアを構築しており、自社サイト全体流入の20〜30%をオウンドメディアが占めています。そのオウンドメディアへ流入する検索ワードのおよそ80%以上が、課題・テーマ関連のキーワードからの流入です。

オウンドメディア活用企業の流入経路割合
オウンドメディア活用企業の流入経路割合
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 その他にも、自社ドメインで実施する場合には、インデックス数(検索エンジンに検索対象としてみなされるページ)が増加することで、検索サイトにおけるサイトの重要度が高まることがメリットとして挙げられます。別ドメインで実施する際には、企業Webサイトへ良質な被リンクを提供することで検索順位の上昇効果が見込まれます。

アクセスしている企業の意思決定を促進

 前回の記事でも触れた通り、BtoB企業の特徴として、購入検討の時間が長いこと、また複数の関係者が検討プロセスで関わることが挙げられます。オウンドメディア化に取り組むことで、メディアとして複数の関係者が必要とするコンテンツを長期的に、かつ柔軟に追加するという視点に変化していくことができます。

 ある企業では、オウンドメディア内に製品に関する情報だけでなく、第三者である専門家のコラム、マーケットレポート、営業に聞くべきポイント、他社との比較資料、提案依頼時の注意点などを提供しています。複数の関係者が知識を得ながら納得して商品を購入できるユーザ体験を提供することで、最終的に自社の営業成果を獲得することに成功しています。

長期的に取り組むと継続的に見込み顧客を生み出すマーケティング資産になる

 現在、BtoB企業の間では「ペイドメディア」と呼ばれる広告媒体を利用したリード獲得のみが使われることが一般的です。ペイドメディアには短期間で多くの認知・リードを獲得できるメリットあります。半面、デメリットとして、検索行動が自社では把握できない、出稿期間やメディア全体を自社でコントロールしきれないなどが挙げられます。

 オウンドメディアは、メディアとしてコンテンツを提供し続けることで長期的に見込み顧客を生み出すプラットフォームとなります。長期的に検索行動をとらえ続けられる上、自社でメディアをコントロールできる点がメリットとなります。今後はペイドメディアとオウンドメディアをすみ分けたり組み合わせたりしていくことが重要になります。

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